彦四郎の中国生活

中国滞在記

人生懸け約1030万人が挑む"超学歴社会"中国で大学入試「高考」❶約700万人が大学に入学できる

2019-06-11 13:35:17 | 滞在記

 今年も6月7日(金)・8日(土)の2日間にわたって「2019年普通高等学校招生全国統一考試」(通称「高考[ガオカオ])が行われた。私の住むアパートから歩いて15分ほどのところに福建師範大学付属高中(※高校)がある。大阪府ほどの面積があり人口は700万人を擁する福州市の中の「倉山区」の高考の試験会場と毎年なっている。ちなみに中国では、小学校は「小学」、中学校は「初中」、高校は「高中」、そして大学は「高等学校」又は「大学」と表記される。大学の学長は「校長」と呼ばれる。

 午前7時半ころに試験会場の福建師範大学付属高中の正門前に行った。ぼちぼち受験生と父母たちが集まっていた。歩道には「高考加油站(高考頑張れ!所」と書かれた長机が置かれ、上にはペットボトルの水やサンドイッチなどが置かれている。受験生用のさしいれで、自由に取得できる。設置しているのは大手学習塾チェーン店などだ。開門15分前の7時45分頃には大勢の受験生や父母たちが集まってきた。 

 友達と談笑する受験生、最後の受験勉強の確認をするためノートや参考書などをチェックしている受験生たち。付き添ってきた親と話している受験生も多い。

 警察の装甲自動車の横で警備にあたる武装警官が直立不動で待機している。午前8時に門ゲートが開き受験生たちが構内に入って行く。入場の際、ゲートで「身分証明書と顔写真が貼られた受験票」を提示している。

 少し緊張のおももちで入場していく受験生たち。地元テレビ局や新聞社の記者などが中継をしている。祖父母の姿も少しは見えるが、受験生につきそってきているのは、ほとんどが父母だ。

 縁起を担いで赤い服装で付き添いに来ている父母の姿も目立つ。試験会場に入って行った我が子の後ろ姿を、祈るような表情で見送る父や母。見送った後に、目頭(めがしら)をあつくしている人の姿も。「北京大学」とプリントされたTシャツを着て母親に抱かれている小さな男の子。ゲートの前で、受験票を忘れたらしい男子受験生が警備員とともに立っていた。20分ほどが過ぎた8時20分ころに、電動バイクに乗った父親が急ぎ「受験票」を持って来たので、それを受け取り会場に入って行った。

 午前8時半に入場ゲートが閉められた。それからもずっと門の前で見守り続ける父母たち。8時40分頃に、遅刻した受験生が一人やっていて入場を認められた。受験生たちは控え教室に、「ペン・鉛筆・消しゴム」以外のものは全てこの教室に置いて、試験教室に8時50分ころにそれぞれが向かっていった。午前9時、第一日目の試験が始まった。

 午前8時30分すぎに、「電波・電信傍受機器」を屋根につけた特別車が入って行った。いわゆる傍聴などもできる機能をもつ車両だ。試験での電波・電信を使ったさまざまな機器も販売されていて、試験でのカンニングが絶えないのは中国や韓国では周知のことだ。試験会場周辺の道路は、試験時間中の騒音厳禁で、音のしない電動バイクと公共バス以外の自動車の通行は禁止される。

 1840年~42年のイギリスとの阿片戦争の敗戦により、広州・厦門(アモイ)・福州・寧波・上海の5港が外国に開港された。ここ試験会場がある倉山区には外国の商館や住宅や銀行、領事館だったレンガの建物が多く残る。「光明港河川公園」に端午節の龍船を見に行くために、試験会場近くのバス停に行く。バス停の前に「輸林琴行」という名の「古箏工作所(教室)」の建物があり、箏の音が聞こえてくるので中を覗くと古箏のレッスンが行われていた。

 今年の高考受験者は1030万人と報道されていた。昨年度より100万人ちかい増加となる。試験結果により、このうち700万人ほどの受験生が、2800ほどある様々なレベルの大学に入学できることとなる。試験結果は6月下旬に受験生に知らされる。受験生たちは自分の試験結果(総合得点)をもとに、昨年までの大学合格点数レベルを精査しながら、5つの志望大学先(学部・学科)を申請する。

 国家及び各省教育庁が受験生たちの入学先を決定し受験生に通知する。ちなみに、大学レベルの高い大学に入学が決定した受験生ほど、7月中旬頃という早い時期に通知が来る。7月下旬までには、全員に通知が来るようだ。点数が足りず、大学に入学できなかった300万人あまりは、専門学校などの進路をとるものがほとんどだ。浪人は認められているので、翌年、「高考」に再びチャレンジすることは可能だ。

 一昨日の9日(日)、携帯電話で報道記事をみていたら、「福州の高考生 考査終了後に 川に飛び込み自殺、試験のできを苦に自殺か」と動画報道がされていた。最近、福州も大雨が続き川は増水している。