彦四郎の中国生活

中国滞在記

日本のTV❷―珠玉の作品、「京杭大運河」「白い巨塔」「街道をゆく」「四度目の女房」「タクシー運転手」

2019-06-05 23:13:43 | 滞在記

◆前号のブログで、途中で記事が途切れてしまいましたので、以下に記事を続けておきます。➡そのドラマの一つ「如懿伝(にょいでん)―紫禁城に散る宿命の王妃」は、5月下旬から毎週土曜日の午前中に、BS「WOWOWプライム」で放送されていてる。中国版「大奥」で、中国ではかなり高い視聴率(テレビ放映)を記録した。

 7月からは同じ放送局で中国王朝ドラマ「宮廷の諍い女」が放送される予定だ。一般に中国のドラマは45分~60分/回が25回以上あるのが普通で、50回というのも珍しくない。歴史ドラマとなると、50回以上が普通で、上記の2つのドラマの場合70回ほどとなっている。

 ぜひに見たかった番組だったが、日本帰国中の2019年2月4日に放送された番組だったので見ることができなかった。京都の自宅のテレビではBSテレ東(BSジャパン)が受信できないからだった。番組名は、日中共同制作中国大紀行「京杭大運河〜王宮に繋がる水の路1794キロを行く」。待ちかねたこのドキュメンタリー番組の再放送が5月26日にあり、2時間をくいいるように視聴した。旅のナビゲーターは俳優の田辺誠一。

 中国の歴史を理解するうえで欠かすことができないのが、華北の北京と華中の浙江省杭州を南北に結ぶ世界最大の大運河「京杭大運河」である。小野妹子が遣隋使として中国に渡った隋の時代に誕生して1400年を経っても尚、世界最大を誇る大運河。杭州から揚子江と黄河という二大大河ともつながり、古代中国の都・長安(西安)や中世近代中国の都・北京王宮(紫禁城)へとつながる水の道をたどり辿りながら、運河の都でもある「杭州・蘇州・揚州・聊州・北京」という街を巡る番組だった。とても優れたドキュメンタリー。

 山崎豊子原作の「白い巨塔」は、いままでに 主役の財前教授役に田宮二郎や唐沢寿明のなど、何度もドラマ化や映画化がされた作品だ。5月22日から26日まで5夜連続でこのドラマ(TV朝日開局60周年記念)が放映された。今回の主役は岡田准一。友人の里見医師役に松山ケンイチ。財前の愛人役に沢尻エリカ。小林薫などの俳優たちが脇をかためる。見応えのあるドラマだった。

 司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズはとても優れた歴史・地域紀行文だ。これほど優れた日本人の紀行文は他にないように思っている。これを映像化したテレビ番組「街道をゆく」が、CS・時代劇専用チャンネルで5月28日から始まった。放送時間は日本時間午前6時(中国時間5時)からの45分間。

 2回目は「モンゴル紀行」だった。モンゴルのゴビ砂漠や草原地域などに、1996年から2002年の間に都合5回にわたり日蒙共同恐竜化石発掘調査隊の一員として行ったことがあった。2002年8月には最もゴビ砂漠の奥地に行ったが、中国との国境が近く、敦煌まで200kmの距離の所だった。そこで見た「満天の星空、夜の空を埋め尽くす星々と銀河、15~20秒に1度くらいの割合で降り注ぐ流れ星」は、生涯忘れられない光景である。「街道をゆく」の挿絵を描いている画伯の絵がとてもよい。このドキュメンタリー番組でも「星々」の挿絵が紹介されていた。

 珠玉の作品ともいえるドラマ、6月2日にCS・時代劇専用チャンネルで放映された、鬼平外伝―「四度目の女房」が素晴らしかった。ドラマ「鬼平犯科帳」(池波正太郎原作)の「外伝」シリーズの一作品。親子代々の盗賊の一味である男。大工の腕は確かなもので、大店(おおだな)の仕事に入ると、店の絵図面を作り、属する盗賊団が忍び込むために建物の修理の際に細工を施す。1つの仕事に数年を費やす。周りからの信頼を得るためにも、勧められて何回か結婚をする。江戸で所帯をもった「四度目の女房」の元もある日突然、「おまえのことが きらいになって さるわけではない」と行燈に書き残し、忽然と姿を消す。ひたすら待ち続けるが、さまざまな辛い運命に落ちる女房。

 数年後に男は仕事のために尾張名古屋で「五度目の女房」と所帯をもつが、「四度目の女房」が忘れられない。その後二人を過酷な運命が待っていた。女に会いたい男は掟破りで殺される。男の役の片岡愛之助、女房の役は前田亜希さん?という名前なのだろうか?女房役の女優の演技も素晴らしい。中国人女性には、ハッと驚くような美しい女性も多いが、中国女性の美しさとはまた違う日本的な女性の特徴をこの女房は演じていた。まさに しっとりとした優しさと顔立ちをもつ「ジャパンビューティ」の女性だ。 

 韓国映画「タクシー運転手―約束は海を越えて―」をついに見ることができた。BS・WOWOWシネマのテレビ放映で6月2日に放送されたのだ。この映画の時代背景は1980年で、韓国ソウルと光州を舞台としている実話に基づいた映画。韓国の「天〇門事件」ともいわれるのが1980年におきた「光州事件」だ。多くの市民やが当時の軍事政権によって弾圧・虐殺された事件である。

 この事件を知られないようにするために光州市は外部から封鎖された。当時、この光州にて命がけで事件を取材したドイツ人ジャーナリストと彼を乗せて光州を共に脱出した韓国人タクシー運転手の実話の物語。このドイツ人記者によってこの事件は写真や動画とともに世界中に発信された。軍事政権下のもとでありながらも韓国の経済成長を成し遂げ、当時の大統領(選挙で選ばれたわけではない)だった朴正煕(パクセイキ)が暗殺された。彼は、前韓国大統領・朴キネ(女性)の父でもあった。

 この暗殺事件後、軍事クーデターによって韓国の全権を掌握したのが全斗煥将軍だった。(その後大統領に就任)  この動きに韓国全土で民主化を求める運動がおこった。それに対する弾圧・大虐殺事件が光州事件。この事件から7年後の1987年に、ついに韓国は選挙によって大統領を選出するという民主化がようやく実現することとなった。

 この「タクシー運転手」は、昨年に日本では初上映され、優れた映画と評判になっていたが、見る機会を逃してしまっていた。テレビ放映を通じて見たが、とても面白くとても優れた映画だった。韓国で大ヒットしたわけだ。6月7日(金)にも、日本のCS・wOWOWプライムで日本時間午前4時10分から再放送がされる予定だ。

※5月中旬頃から6月上旬までの、心に残る優れた日本のTV番組について2回シリーズで記した。地上波テレビ局よりもBS局などの方が優れた良質の番組を放映しているのが最近の日本の傾向だ。他に優れた番組も多い。例えば、地上波の「ポツンと一軒家(TV朝日)」や「こんなところに日本人(TV東京系)」などなど。NHK大河ドラマ「いだてん」を久しぶりに先日見てみたが、やはりレベルの低いドラマに変わりなかった。見て疲れるだけのドラマだった。脚本家の宮藤官九郎は人を丁寧に描けていないのだ。良質な優れたドラマや映画は人が丁寧に描かれている。