森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

雲を見ている

2015-09-15 | 日記


 子供の頃から雲を見るのが好きでした。
 吸い込まれそうな青空に浮かぶ白い雲、風に吹かれて流れる動物のような雲、そし
てどんよりした雨雲、どれもこれも生活の中に夢や想像を与えてくれます。
 近くの自然公園で面白い形の雲と出会い、切り株に腰かけてぼんやり眺めていたの
です。突然すぐ近くで大きな声がしてびっくりしました。
 「何を見てるんですか、鳥ですか?」
 振り返るとアウトドアファッションできめたご婦人の二人連れでした。年齢はよく
分かりませんが、知的な感じでした。首から黒々とした大きく長いカメラをぶら下げ
いたので、どうやら鳥の写真を撮る人たちのようです。
 「雲です」
 「くも?・・・・」
 お二人とも同じ方角の空を見上げたのですが、あまり関心がないようでした。それ
より余程暇人に見えたらしく、
 「この辺りの人ですか?お友達はいるんですか?駅前のなんとか会館でお年寄りが
集まって楽しくやっているから、行ってみたら」
 ご親切に教えてくださり、去っていきました。
 「はい、ありがとうございます」
 お礼を述べたものの、どう考えてもジイサン、バアサンが集まって楽しくやること
なんて、一体なんなのか思いつきません。それはそれで、先の楽しみに取っておいて、
今暫らくは雲を眺めることにしました。
 秋になると、言葉少なくなって、ただ口を動かすだけの心のかみ合わない会話は、
どうにも面倒になります。でもそれが、今風の生き方ではないことは分かっている
のです。


                              動(yurugi)