武内 ヒロク二

このブログは、武内ヒロクニの絵の紹介や、家での出来事を妻が語ります。
日々、徒然。

緑の騎士(色鉛筆作品紹介613)と アーサー王物語あれこれ

2021-07-08 15:11:16 | Weblog

この絵を取り上げようと思ったことは何度もありましたが、

文章を付けるのが難しくてお蔵入りしていました。

アーサー王物語に「緑の騎士」というのが出てきます。

そんな雰囲気もあるかもしれないという、

強引な印象で取り上げることにしました。

初めてこの絵を見た時は、黙っていました。

この絵を見せてくれた時、「いいだろ。」と言われましたが、

答えようがなく、黙っていました。

なんか可愛くもあるとは思ったけれど、言葉が見つからなかったのです。

武内の頭の中って、どうなっているのか・・・。

バロックの美術書をよく読んでいた時期もあり、

「マニエリスム」という単語をよく聞いていた頃もあります。

本を覗いたら、わたくしは読まなくていい本と判断して、そうだねと頷くのみ。

難解な美術用語が多く使われている本で、敬遠しました。

しかし、バロックの要素がこの絵にはあるのかもしれないと、思える。

 

このところ、アーサー王物語を読んでいました。

あの円卓の騎士の物語です。

絵画教室をしていた頃、指輪物語にはまっていた生徒さんから、

「イギリスは、建国神話がない国なんだよ。

だから、建国神話の代わりに指輪物語とかがあるんですよ。」と、話してくれた。

確かに!と思い、「ナルニア物語」とかもあるな~と、聞きながら思っていた。

イギリスという国の神話がない?これは思ってもみなかったことでした。

確か・・・、ブリテン島は、ローマ帝国にかなり侵食されていたことも思いだされ、

スコットランドのケルト人がなかなか強く、島の北側は征服できなかったはず・・・、と。

ケルト人は、戦車を駆使していて、獰猛で強かったらしい。

そして、建国神話がない・・・、と改めて考えていた。

 

梅雨の晴れ間を見計らって、図書館に行った。

探していた本は見つからず、手に取った本は、「アーサー王物語」。

これって有名なのに、読んだことがない。

そんな風に思って読み進めると、イギリスの建国の神話じゃないかな?と思える内容。

これが、ヨーロッパの物語の基礎になっているようで、面白い。

あの有名な「トリスタンとイゾルデ」も、アーサー王物語に含まれていて、

ワーグナーのオペラが残っているし、映画やゲームにまで登場しているらしい。

ヒロクニさんには、

「ワーグナーのオペラにトリスタンとイゾルテがあるじゃない、

アーサー王物語からきているみたいよ。」と言うと、

「へぇー、そうなの?」

「そのトリスタンとイゾルテは、どんなお話なの?」聞かれる。

「ドラゴンを退治した騎士は、その国の王様の娘の婿になるという話なんだけれど、

その騎士は、自分の国の王様の妃になる人を探していて、婿になる気がなくて。」

「そして、王様の娘は、すっかり騎士に恋してしまっているが、騎士は恋していないわけ。」

「そこで、王の娘を思う侍女が、愛の媚薬を2人に飲ませるのよ。」

フッとヒロクニさんを見ると、しらけた顔して寝そべっている。

(そういう時の顔の無常なこと。顔中でつまらんという表情・・。)

私の話し方、語り方では、恋の情感がそぎ落とされているので、

つまらないのだと悟り、話すのをやめました。

わたしくしも、良人の顔みてすっかりしらけるのであった。

簡単に言うと、マルク王に仕える騎士トリスタンと、

ドラゴンが出没した国の王の妃イゾルデが愛の妙薬を誤って飲んでしまい、

互いに惹かれ合って命を落としてしまうという話。

恋を語らせる専門は、武内にまかせることにしようと思いました。

あの顔・・・。目が死んでいるし・・。

もういい。話はしない。と、意固地な気持ちに・・・・。

 

アーサー王物語は、ヨーロッパの絵画に出てくるモチーフを理解するのに役に立ちました。

有名な画家の絵を紹介します。

すべてトリスタンとイゾルテのテーマの絵になります。

↑ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作  1916年

マルク王に仕える騎士トリスタンと、その王の妃イゾルテが愛の妙薬を誤って飲んでしまう。

その場面が描かれています。いかにも中世らしい雰囲気があります。

ただ、この頃の娘は15歳ぐらいが適齢期だと思うと、随分イゾルテは老けて描かれている。

30代ぐらいに思えます。

そして、甲冑。この頃の甲冑は、重さが20~30キロぐらいあるそうで、

それを着て戦うということから考えると、騎士は体力がかなり必要そう。

 

↑こちらは、オーブリー・ピアズリー 1895年作

イゾルテが、妙薬を飲んでいるシーン。

ビアズリーは、竹久夢二に多大な影響を与えた画家です。

グラフィックな要素があり、赤色の印象が強く、

この色によって、これから起こるであろう悲劇を想像させます。

 

↑こちらは、サルバドール・ダリの作品。

あの時計が溶けた絵で有名なシュールな世界の画家です。

狂った情愛を表しているとしたら、ピッタリです。

 

この他にも、アーサー王物語からインスピレーションを得た絵が、

本当にたくさんあります。

画家の源泉になっているようで、ヨーロッパの文化を感じます。

 

アーサー王物語の始まりは、小国同士が争いをすることで、ブリテン島が荒廃に見舞われ、

大きく統一することで、秩序を取り戻し、平和を目指すのがアーサー王なのです。

そして、その志やアーサー王の人徳によって集まった名騎士が集まるのです。

その騎士は、上下関係の関係なく円卓に座る。

秩序は戻り、平和は訪れる。

これでめでたし、めでたしで終わればいいのですが、

平和が続いてからは、騎士は戦うこともなく、自分を向上するための出来事も起こりません。

そこで、見識や冒険心のために、騎士達は、城を出て旅に出て行きます。

長く平和が続きますが、皆が旅に出ている内に、城に不穏な空気が立ちこめ、

アーサー王に裏切りが起こり、アーサー王の息子との戦いに。

そして、2人とも壮絶な死を向かえます。

全編を通じて、勇気や、愛。

そして律する精神、まっすぐな精神、騎士道精神の原型を感じる物語。

わたくしは、「ランスロット」という騎士が好きになりました。

武勇に秀でていて、ちょっと大人な騎士なのです。

酸いも甘いも知った大人という感じが他の騎士にはない魅力を備えていていい感じなのです。

 

そして、この物語を読んで、つくづく思ったことは、

「恐怖と勇気は、ワンセット。」なんだと。

勇気を出すには、恐怖が必要なのだと実感しました。

勇気を出す時というのは、しょっちゅうあるわけではないが、

勇気を出さねばいけない時って、心臓が高鳴っていて、恐怖や不安があります。

崖から飛び降りるような気持ちとも似ていると思います。

どうでしょうか?

私が勇気を出した時って、どんな時だったかな?と振り返っています。

長々と書きました。

絵って面白いと思って下されば幸いです。

 

雨が降り続きます。

そんな雨の日の庭。

↑ひまわりの背が大きくなってきています。

ニューギニアインパチェンスは、かなり大きな鉢に植え替えました。

どれぐらい大きくなるのか?楽しみにしています。

↑昨年採取した朝顔を植えてあります。

ネットを張ったので今年は見ごたえがあるかもしれません。

手前にトマトを植えてしまい、トマトで朝顔が見えなかったら、どうしようか。

落ち着きません。

 

 

 


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2 コメント

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Unknown (ともりん)
2021-07-13 18:36:57
「マニエリスム」知らない言葉だったのでネット検索してみたところ、さほりんがこの作品の紹介にこの言葉を出したことが少し「なるほど」と、わからないながらもなんとなく思いました。
難しい作品ですが、ちょっとダークでニヒルでかっこいいです。ピカレスクロマンのヒーローのような感じがします。

「トリスタンとイゾルデ」恋の情感がないと、確かに理解が難しいストーリーかもしれませんね。
少し前に「トリスタンとイゾルデ」をモチーフにした古い漫画を読んだのですが、タイトルが思い出せません。
その漫画では、かなりロマンティックにアレンジされていました。
が、イゾルデのトリスタン恋しさ度合いがものすごくて生霊みたいになってしまい、原作とはちょっと別物になっていました。
絵画のご紹介、面白かったです。オーブリー・ピアズリーが好きだと思いました。確かに竹久夢二っぽいですね。グラフィックな赤に、どきっとしました。
恐怖と勇気はワンセット、なるほどと思いました。勇気、という言葉は本当によく使われますが、実際に勇気を出すことはなかなか難しいと思います。
勇気の前には決断と覚悟が必要、と考えていますが、「恐怖と不安」がなければ「決断と覚悟」には結びつかないな、と。

ひまわりがぐんぐん伸びていますね。真夏のひまわりとニューギニアインパチェンスのダイナミックな共演が楽しみです。
トマトで朝顔が見れなくても、トマトが豊作ならば良し!です(笑)
返信する
決断と覚悟も必要ですね。気がつきませんでした。 (さほりん)
2021-07-14 09:47:15
コメントありがとうございます。
「マニエリズム」という言葉をはっきり認識するのは難しいと思います。私も、ヒロクニさんが何か言っていたけど、薄らぼんやりとしか分かりません。(笑)難解なものの1つです。調べてみた!凄いです。本当に恐縮です。この絵は、私にとっては、非常に難しいのです。しかし、ヒロクニさんは、難しい本が好きなようで、よく持ってきて読んでくれることがありますが、聞きながらシーンとしている私なのです。反応しずらいというか・・・。(笑)

トリスタンとイゾルテは、漫画にもなっているのですね。やはり、解釈を広げて新たな物語にしたくなる素材なのだと改めて思いました。生霊?それもありだと思い、そのストーリーを想像して、ちょっと笑えます。
絵を3点、紹介しましたが、まだまだあります。どれだけトリスタンとイゾルテが好きなのだろうと云うくらい。ビアズリーは、イギリス人で、オスカー・ワイルドの本に挿絵を描いています。

勇気と簡単に言うけれど、勇気をふりしぼらないといけない時というのは、自身には、もしかしたら来ないで欲しいことかもしれません。(笑)実は、ヒロクニさんとの結婚を決めた時は、非常に勇気がいりました。もう、どうにでもなれ!でした。

今年は、ひまわりを庭の中央の部分に植えたので、どんな風になるのか楽しみにしています。朝は、蝉が鳴き、夏の到来だ!と思いつつ過ごしています。

いつも勉強熱心なともりん。感心します。
そして、いつも丁寧に読んでくださり、ありがとうございます。なんだか、熱いホッとなエネルギーを感じます。そのエネルギーを感じつつ、感謝!
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