ヒロク二さん曰く、「好事魔多し」とはジル(猫)のコト。この写真を見てのとおり襖を引っかいて破るどころではなく穴が空いている。布団をしまっても布団がいつも見えるようになってしまった。ジルは、多量にご飯を食べ、臭いトグロを巻いたりっぱなウンチをして、外で走りまわって家に帰ってくると、ビタッとわたしの横に張り付いて離れない。ヒロク二さんにもキタハマにも嫌われているのでしかたないと思っていたら、美しく賢く楚々としたキタハマは、この様子を悲しげに見つめている。ジルにすっかり参ってしまって、やつれている。キタハマからは、愛されている充足感が抜け落ち、なんとも哀れな感じが漂いとても不憫な猫ちゃんになってしまった。ジルが近くにいるので、つい頭を撫でていたら、キタハマの視線が・・・。思わずキタハマに近寄り「すりすりしてごらん」と言っても目を細めてジーと目を潤ませている。以前は必ず「すりすり」を嬉しそうにしていたのにしなくなった。
飼ううちにジルがいかに粗雑で、頭が悪い猫かという事が浮彫りになって来た。考えがなく突っ走る。怒られても学習しない。机の上のものは、すべて床へ落とす。靴下は噛んで穴だらけにする。冬のストールは噛んで唾液でムチャクチャに。パソコンを打っているとマウスを持つ指、一指し指を噛む。鼻を近づけて鼻と鼻をコッツンコしたら、鼻を噛まれわたしは悲鳴をあげた。ジルの泣き声は「ウネウネ、ウネウネ」と走りながら鳴くというスタイル。可愛くて目の中に入れても痛くないという言葉があるが、キタハマは目に入れても痛くないくらい可愛い猫だが、ジルは目に入れたら痛いような気がする。
猫にかまっていると、今度はヒロク二さんが機嫌が悪くなり、してもしなくてもいいような用事、唐突に「猫にかまうくらいならきつねうどん作って」「猫にかまうくらいならおかゆ作って」と言い出す始末。
キタハマには、特別に鳥のささ身の新鮮なのをあげて、その餌に飛び込んでくるジルを叩き、食べ終わるのを見守ってあげていたら、キタハマは元気になってきた。ヒロク二さんには、暖かい鍋づくしで、ちょっぴり日本酒で晩酌を。ジルを飼ってから、我が家は、愛情を巡って熾烈な戦いが繰り広げられているのである。これって、ストレス?育児ノイローゼの始まり?思わず一升瓶からドドッと自分で日本酒を注いだ。「酒だ、酒もってこい!♪おらは死んじまっただぁ~。おらは死んじまっただぁ~。天国よいとこ、ねーちゃんはきれいし、ハハハ~♪♪」という歌を思い出した。子供の頃、意味もわからず歌っていたら親にすごく怒られた歌。あったよね。
ジルちゃん、こんなに可愛かったのに。
ヒロク二さんとわたしと2人で「いい黒してるのに。マースブラックなんだけど」と、沈黙。「好事魔多し」がジルのコトだとしたら、まあいいか。