40年ぶりの詩集とのこと。92頁に23編を収める。
見えるもの、そして思われるものがくっきりと輪郭をあらわにしているのに、その有様はどこか頼りなげだ。言い切っているのに、どこかにためらいのようなものが感じられる感覚が魅力的である。軽い言葉のうしろになびくものがあるようなのだ。
「深みから」は海が舞台となっている作品。浜には「こころのつづきを/たしかめに」来る人がいて、ただ黙って座っている。
たしかに
あなたの
腰を降ろすこの砂は 海からのつづきでもあるしあのうみのほうだってまた うしろからの きりたつ崖のつづきといえるわけだし
その崖のはるかうえには
大きな木星がかかり
これらすべての影にひかれて あなたの目の前の波は/もりあがるよね
こうして「しずかな荒れた浜で」波を見ているだけなのだが、その海の深みには沈んでいるものがあるわけだ。それは「深さのなかを傾く客船や 軍艦」なのだが、海を見る人にはこうして次第に見えてくるものがあるわけだ。
「無停車行」では、ぼくは汽車に乗っている。その汽車の客は「かなしみは首までつまっているというふうで/汽笛のなるたびいっせいにくびをふる」のだ。そこで、「先方につくまで夕焼けばかりのかるたををしましょうよ」ということになる。
汽車はひめいのトンネルをくぐる
「一回で百日 というのもいいものなのですよ」
くばられてくりかるたは暗い絵ばかりで
読みときかたがわからない
「あなたの負けです
おもいきりかたがかんじんなのです」
この奇妙な名前のゲームが、どこかへ行こうとしている人々がなんとも侘びしい存在であることを示唆している。そんなゲームでもしているほかはないような汽車の旅なのだ。どこにも止まらない汽車はどこまで走りつづけるのだろうか。人々がたどりつく”先方”など、本当にあるのだろうか。
見えるもの、そして思われるものがくっきりと輪郭をあらわにしているのに、その有様はどこか頼りなげだ。言い切っているのに、どこかにためらいのようなものが感じられる感覚が魅力的である。軽い言葉のうしろになびくものがあるようなのだ。
「深みから」は海が舞台となっている作品。浜には「こころのつづきを/たしかめに」来る人がいて、ただ黙って座っている。
たしかに
あなたの
腰を降ろすこの砂は 海からのつづきでもあるしあのうみのほうだってまた うしろからの きりたつ崖のつづきといえるわけだし
その崖のはるかうえには
大きな木星がかかり
これらすべての影にひかれて あなたの目の前の波は/もりあがるよね
こうして「しずかな荒れた浜で」波を見ているだけなのだが、その海の深みには沈んでいるものがあるわけだ。それは「深さのなかを傾く客船や 軍艦」なのだが、海を見る人にはこうして次第に見えてくるものがあるわけだ。
「無停車行」では、ぼくは汽車に乗っている。その汽車の客は「かなしみは首までつまっているというふうで/汽笛のなるたびいっせいにくびをふる」のだ。そこで、「先方につくまで夕焼けばかりのかるたををしましょうよ」ということになる。
汽車はひめいのトンネルをくぐる
「一回で百日 というのもいいものなのですよ」
くばられてくりかるたは暗い絵ばかりで
読みときかたがわからない
「あなたの負けです
おもいきりかたがかんじんなのです」
この奇妙な名前のゲームが、どこかへ行こうとしている人々がなんとも侘びしい存在であることを示唆している。そんなゲームでもしているほかはないような汽車の旅なのだ。どこにも止まらない汽車はどこまで走りつづけるのだろうか。人々がたどりつく”先方”など、本当にあるのだろうか。