瀬崎祐の本棚

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詩集「エンドルフィン」  小島数子  (2013/01)  フランス堂

2013-02-02 22:18:44 | 詩集
 B6判、ソフトカバーの63頁に9編を収めるという、軽やかな感じの詩集。
 作品にも、事物にまとわりついているはずのしがらみを潔く切り落としたような軽やかさがある。眼前にあらわれる具体的な事物はもとより、それらに呼応して提示される見えない事物にも、引きずるものがない。それは言葉に余分なものが付いていない潔さだ。
 詩集タイトルとなっている”エンドルフィン”は肉体的苦痛に陥った時に分泌される脳内活性アミンの一つで、ランナーズ・ハイをもたらしたりするとも言われたりしている。そのタイトルの作品「エンドルフィン」では、外部にあったものが話者の内部へ入り込み、話者を操っているようだ。そこに今の自分がいる。

   時計の針が止まってしまい、
   今が何時ごろなのか、
   わからなくなると、
   やわらかな気持ちになる。
   カボチャを切り分けるとき、
   包丁に入れる力は黄色くなる。
   木の葉が風に吹かれてたてる音は、
   不安を昼寝させるための子守唄だ。

 先に、引きずるものがないと書いたが、それは未練や迷いがないためだろう。ここには自己が置かれた状況をすべて受け入れている覚悟のようなものがある。それが潔さを感じさせる所以だろう。
 詩集最後には、それぞれ8章、9章からなるやや長い作品が2編おかれている。
コメント
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