瀬崎祐の本棚

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幻竜 27号  (2018/03)  川口

2018-04-20 17:56:47 | 「か行」で始まる詩誌
「ガラス瓶の放心」こたきこなみ。
ガラス瓶は「懸命に 空の吐息を抱きとめたので」透きとおってしまったのだという。詩われているのがどのような形の瓶かは判らないが、中に容れるものとの物語がその度に生まれるのだろう。やがて、ガラス瓶は「我知らず目眩して/わずかな風に揺すられ」砕けてしまう。

   なめらかな表面に放恣のギザギザ
   あとは 地表に空を映すおびただしい破片の乱反射

     あ さわらないで
     うっかり拾う手に血が出るよ

単に眼の前にあるガラス瓶ではなく、作者と一体化したガラス瓶であり、それが語る物語は作者自身の物語となっている。

「冬の枯葉を踏みに街へ」宇佐見考二。
詩が書けない夜が過ぎて、クリスマスイブの街へ話者は枯葉を踏みに出かける。おそらくは、自分も枯葉を踏みたいのだが、行きずりの他人が踏む枯葉の音も聞きたかったのではないだろうか。何となくそんな気持ちになるときはあるだろうと思う。そして、「枯葉に埋まっているかもしれない/その場処」を話者は求めている。自分への優しさのようなものを感じる最終部分は、

   音いたるところにあり

   自分の音を踏む
   そんな日々があってもよい

「タブリーズの古い古いバザール」白井知子は、イランにある中東最古のバザールでの話。話者は、訪ね当てたバザールの一角の店で、黄薔薇の生花でドレスを作るのだが、幻想的で、白昼夢を見ていたような雰囲気も漂う作品だった。
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