瀬崎祐の本棚

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詩集「返事」  斎藤なつみ  (2013/08)  本多企画

2013-09-28 09:59:11 | 詩集
 第4詩集。120頁に28編を収める。
 誰でも生まれて初めて見る空というものはあるわけだが、あまりに幼すぎて覚えてはいない。しかし、「はじめての空」は一人一人に必ずあったわけだ。

   空は
   きっと ここにしかないのだろうね
   ここにやってくる前に
   私は 空をどこにもみなかったのだから

   母は あかんぼうの私を抱いて
   夏が何度もおとずれたように
   眩しい空をみあげていたのだろうけれど

 どこまでも青く高い夏空が目に浮かぶようだ。母にとっては夏空はありふれたものだったわけだが、”はじめての空”を見るあかんぼうを抱いていることによって、母にとってもはじめての空になったことだろう。生きてきたことの大切さが、懐かしさと共に改めて思われる作品。
 誰にともなく「もう一度 尋ねてください」と語りかけている「返事」は、自分が感じて用意した答えを確かめようとしている作品。

   もう一度 尋ねてください

   身を屈め 私に問いかけた人が誰であったのか
   問われたことが何であったのか
   風がとうに消し去ってしまったけれど

   遠い日のひざしのなかに
   今も 幼い女の子がひとり
   返事を一つ 大切に胸に抱いて立っています

 「尋ねられたことには/一つのこらず答えていきたい」のだという。そのことによってこれまでの自分を確かめ、今の自分にたどり着きたいのだろう。
 柔らかな感性が静かなもの言いであふれてくる詩集である。
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