72頁に、タイトルなしに31の散文詩の断章が収められている。すべての断章は4~6つの4行の連から成っており、話者が交代しながらのモノローグがつづく。
始めのパートの女子高生である話者は、自分を囲む人や出来事に苛立っている。苛立ちの理由は、おそらく自分でも説明はできない次元のものなのだろう。理由がわからなければ、苛立ちはさらに増強される。
ミナカタクマグスさん 声をあげなかった私は こんなところまで
来てしまいました 猿面たちといっしょに 汚れています 目に
見えないのをいいことに 粘菌も森も 穢してやまない 凶暴な人
たちと 高い崖のうえに 並んで立ち いまにも 墜落しそうです
(「03」6連目)
墜落しそうなほどに苛立っているのは、自己の存在のあり方が意図したものにはなっていないからなのだろう。他者の判断基準で苛められ、制服の中にいなければならないのだ。とても引きこまれてしまう。読む者の感情を強引に揺さぶる言葉の強さが感じられる。
次のパートでは、話者は男子高生となり、リクルートスーツの女性となり、生活のために電車に揺られる人になる。しかし、やはり外部事象に対する違和感があり、そこからの言葉が発せられている。
そして最後のパート。話者を誰かに仮託するのではなく、思わず作者自身があらわれてしまっているようだ。それまでは覆われていたものが素直に差し出されてきていて、言葉は美しいものになっている。「21」では話しながら歌う褐色の肌の少女について語られる。その3連目は、
言葉の意味が わからなくても 悲しみは伝わる 呼吸のたびに
肺に入る空気が 重たいから 名づけられない 悲しみの 棘が
ささるから 砂に転がる 巻貝を愛するのは 抜殻だから 貝は
息を吸う悲しみを 海にゆだねて 軽いから
地球上には戦争があり、LGBTの人がおり、花粉をつくらなくなったセイヨウタンポポがある。こうして言葉にしてみると、世界はなんと不安定に揺れているのだろうとあらためて感じる。この詩集はその全体で、揺れ続けている地球上の事象にやはり苛立っているのだった。
始めのパートの女子高生である話者は、自分を囲む人や出来事に苛立っている。苛立ちの理由は、おそらく自分でも説明はできない次元のものなのだろう。理由がわからなければ、苛立ちはさらに増強される。
ミナカタクマグスさん 声をあげなかった私は こんなところまで
来てしまいました 猿面たちといっしょに 汚れています 目に
見えないのをいいことに 粘菌も森も 穢してやまない 凶暴な人
たちと 高い崖のうえに 並んで立ち いまにも 墜落しそうです
(「03」6連目)
墜落しそうなほどに苛立っているのは、自己の存在のあり方が意図したものにはなっていないからなのだろう。他者の判断基準で苛められ、制服の中にいなければならないのだ。とても引きこまれてしまう。読む者の感情を強引に揺さぶる言葉の強さが感じられる。
次のパートでは、話者は男子高生となり、リクルートスーツの女性となり、生活のために電車に揺られる人になる。しかし、やはり外部事象に対する違和感があり、そこからの言葉が発せられている。
そして最後のパート。話者を誰かに仮託するのではなく、思わず作者自身があらわれてしまっているようだ。それまでは覆われていたものが素直に差し出されてきていて、言葉は美しいものになっている。「21」では話しながら歌う褐色の肌の少女について語られる。その3連目は、
言葉の意味が わからなくても 悲しみは伝わる 呼吸のたびに
肺に入る空気が 重たいから 名づけられない 悲しみの 棘が
ささるから 砂に転がる 巻貝を愛するのは 抜殻だから 貝は
息を吸う悲しみを 海にゆだねて 軽いから
地球上には戦争があり、LGBTの人がおり、花粉をつくらなくなったセイヨウタンポポがある。こうして言葉にしてみると、世界はなんと不安定に揺れているのだろうとあらためて感じる。この詩集はその全体で、揺れ続けている地球上の事象にやはり苛立っているのだった。
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