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詩集「青銅の馬」  船田崇  (2014/07)  書肆侃侃房

2014-08-07 15:09:43 | 詩集
  第3詩集。125頁に26編を収める。
 散文詩で書かれた「家出」や「崩壊」「日課」は、かなり理知的な作品。肝臓をはじめとする自分の臓器が”家出”をしてしまったり、鏡でできた身体を男が持っていたりする。寓話として読むことができて、創り上げられた世界が楽しい。
 「こびと」は、「真夜中に咳をしたらこびとが飛び出した」というもの。そのこびとはお喋り好きで、僕の代わりに何でも話してくれる。そのおかげで出世もし、美しい女性と結婚することもできた。しかし、ある日、こびとは川に流されていなくなってしまう。

   こんな話は人生のなんの役にもたたない。が、ただ君に話した
   かったのはこんな抜け殻のような輪郭だけの人間が向こう岸に
   は無数にいて夜通し頭を抱えて歩き回っているってことそして
   よく晴れた朝には君の信じる世界に向かいブラックホールのよ
   うな口を開け並んで突っ立っているってことなんだ。

 私たちは言葉を交わすことによって他者、つまりは自分以外の世界と共存しているわけだが、そんな言葉を失った状態を上手く視覚化している。
 行分け詩の「船がみた夢」は、「一隻の船が夜を彷徨っている」と始まる。船が考えているのは「幻の航海のこと」であり、「幻と知った世界のこと」である。船は確かなものに辿り着くことはないようなのだ。

   すべての死者の夢のなか
   帰港することも
   難破することも許されないで

 船は何を夢見るのだろうか。実際の船は、お伽噺に出てくる幽霊船のように、永遠に暗い海を彷徨い続けなくてはならないのだろう。この船のイメージは、何に結びついていくのだろうか。
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