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詩集「白い地図」  青山雨子  (2011/10)  書肆山田

2011-12-10 22:28:47 | 詩集
 第3詩集、69頁に10編を収めているのだが、内9編は短く途切れる言葉での行分け詩で、詩集タイトルともなっている「白い地図」1編が22頁に及ぶ散文詩である。この破綻をきたしているとも言える作品構成の意図はなにだったのだろうか。
 「年寄りの口のなかで/ろう燭のあかりが見えるときがある」とはじまる「ろう燭」は30行の行分け詩。物事の一部だけを描写しては、何の説明もなしに連を跳んでいく。読む者は空白の行に落ちているものを感じながら物語を追っていく。「老人は/飯炊き人とな」り「竈に火をつけ」る。読んでいると次第に、か弱く炎を上げているあかりが、年寄りの命と重なってくる。それは諦観に通じる強さも感じさせる。

   ろう燭は 数がすくないほど炎がながくのびる
   一本は最高である

   そしてその炎が消えてしまったら
   笑っても口のなかに
   ろう燭の写真
   ぱらり と、あるだけです
                      (「ろう燭」最終部分)

 読む者に見えない部分を補わせるだけのぎりぎりの言葉を選び取っていて、読み終えた後にも続いていく物語がある。
 さて「白い地図」である。30年前に棲んでいた町へ戻ってきた男の独白である。見える風景を執拗に描写し、細部にいたるまでの説明を延々と続ける。

    サワが住んでいた一角は、道路が広くなって舗道もできていた。
   周辺の住民は、よその町へ立ち退きをしていったのである。サワの
   家があったこの場所に長いあいだ敷かれていたという砂利。私が今
   立っているこの歩道の場所も、彼女の父の店の内部だった。

 この作品はただ語っている。何かを伝えるためにではなく、ただ語るという行為を求めて作品が成り立っている。作者には語り尽くしたい希求があったのだろう。そんなときもあるのだろう。
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