瀬崎祐の本棚

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ガーネット  84号  (2018/03)  兵庫

2018-03-22 18:25:41 | 「か行」で始まる詩誌
「ウィーク・エンド」神尾和寿。
断片的な呟きのような9章からなる作品。表面上はとりとめもなく彷徨う意識が捉えた外部事象を自分の内側に取りこもうとしている。そこに総体としての自分が在る。①を紹介する。

   ひどい天気だねと
   相棒がささやく
   僕は
   答えない
   「真っ赤なポルシェ」を抜き去ったのは
   ついさっきのこと
   ハンドルを握り直して
   前方を向く

「幹」高木敏次。
こちらは、自分の外の世界と対峙する孤独感が漂っている作品。自分の外の世界には何があるのだろうかと、確かめなくてはいられないような焦燥感もあるのかもしれない。逆説的にはなるが、そんな自分の外の世界によって自分は規定されているのかも知れない。最終部分は、

   私を忘れた男は
   どこかに住んでいて
   立ち上がり
   熱い果物のようなものがこみあげた
   私が駆けてくるのではないか
   振りかえる

高階杞一が「詩集から」というコーナーを連載している。私(瀬崎)も読んでいる詩集では自分の感性との違いを愉しむのだが、まったく知らない詩集に会わせてもらえることも嬉しい。中村薺「かりがね点のある風景」は87歳の方の詩集とのこと。柔らかく瑞々しい言葉に感心する。5連からなる作品「八月十五日」はあの玉音放送を詩っている。3連目を紹介する。その日は作者が六年生の夏休みだったようだ。

   未だ知らない人もいた
   わたしは肩越しにそれを聞いた
   鉄橋ではいつもと変わらない揺れ方だったから
   運転手は未だ知らずにいたらしい

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