瀬崎祐の本棚

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ロッジア  14号  (2015/02)  兵庫

2015-02-16 22:06:56 | 「ら行」で始まる詩誌
 毎号濃密な作品世界を現出してくる時里二郎の個人誌「ロッジア」14号が届いた。
 今号は《名井島》field notes vol.1 として、3編の行分け詩と「名井島のためのエスキス」と題した小文が載っている。 
 「鳥のかたこと 島のかたこと」では、「見えない島の鳴かない鳥」の”かたこと”が記されている。それは祝詞のような雰囲気の、意味を持つ以前の言葉である。これらの言葉の由来はあとの作品で明らかになってくる。
 この名井島は、通訳と呼ばれる言語系アンドロイドを、かっては製造し、今はその不具合を補修する場所なのだという。

   名井島の工場(ファクトリー)には 彼の保育器が残されている
   (略)
   今は抜け殻となった保育器は 天気のいい日には開いて陽にあてられる
   草の花のように残された島の挿話に風をとおすためだ
                         (「名井島(ないじま)」より)

 さらに「伯母」では、私に「音の切れ端」を与えてくれる人物が登場する。

   いくつもの島々が みどりの卵のように浮かぶ
   見えていても ない島と 見えないけれども ある島があるのよと 伯母は言う
   どの島がない島なのと 私が問うと
   私と伯母では 見える島とそうでない島は同じじゃないからと伯母は笑う
   無音の耀く波が私の口を濡らす
   この島も ここから見える島も まるで 海の息づきのようだ

「エスキス」によれば、(驚くべきことに)私は詩人の《通訳》なのである。そのために、ヒトの言語生活機能を部分的に壊しながら言葉を習得しているようなのだ。ここであの原初的とも言える「かたこと」が結びついてくる。
 このように24頁のこの詩誌は1冊全体で一つのおおきな物語(の一部)を構築している。その緻密な構想に圧倒され驚嘆する。
 このシリーズは言語系アンドロイドというものの存在をとおして、何を詩として認識するのか、それが生まれる場は何処にあるのか、といった問題に迫っていくのであろう。次号を期待して待ちたい。
コメント
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