瀬崎祐の本棚

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詩集「二十八星宿」  秋山基夫  (2013/01) 和光出版

2013-03-21 19:16:48 | 詩集
 一辺が十二センチほどの正方形の判型で、37頁の詩集。
 今年1月に岡山で「曽我英丘の世界 -星宿の空間 書の造形-」が開催された。この詩集に載せられた作品28編はその企画にあたり書き下ろされたもので、展覧会ではこれらの作品を曽我が書としたものが展示された。
 ”二十八星宿”というのは、司馬遷「史記」で記された東洋天文学とのこと。28日をかけて空を一巡する月の通路、黄道が28に区分して命名されている。それは乙女座の一部である「角」(和名”すぼし”)から始まり、鳥座の一部である「軫」(和名”みつかけぼし”)に至っている。
 作品はすべて四行詩で、その作中に星宿の名も組み込まれている。

   危
   俺たちは大陸から馬できた
   俺たちは鞍で眠り鞍で死ぬ
   天空を飛ぶ危ない夢を見た
   目覚めると海を越えていた

 28の星宿の名を戴いての作品作りというのは並大抵の技ではない。見事に起承転結の構成をとりながら、そこに空を感じさせる広がりのある世界が構築されている。28の小宇宙と言ってもいいのかもしれない。
 展覧会ではこの28の書に加えて、青龍、玄武、白虎、朱雀の四神も書かれており、その書は詩集の表紙、折り返し、裏表紙を飾っている。もう一編紹介しておく。

   鬼
   死んだ蟹の魂は天上に赴き
   残った甲羅は砕けてしまう
   よこしまの鬼は抜け出して
   鋏を差し上げ浜辺を逃げる
コメント
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