瀬崎祐の本棚

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臍帯血 with ペンタゴンず  2号  (2012/07)  東京

2012-09-05 20:13:12 | 「さ行」で始まる詩誌
 発行人は次々に詩誌を発行している榎本櫻湖。彼女はいったいどれだけの言葉を抱えては放出しているのだろうと感嘆する。この詩誌の書き手は、暁方ミセイ、中村梨々、野村龍、古崎未央、八潮れん、それに榎本。どの作品でも夥しい量の言葉が(もはや暈で表現したいほどの迫力なのだ)渦を巻いている。小気味よい。

 「結び野」中村梨々。
 クーイーという、人とも小動物とも植物ともとれる相手と絡まりあいながら野原を転がり、街を歩き、公園で遊んでいる。「私」「ぼく」「わたし」と発話者の意識も変遷する。
 季節は四月なので、私の身体もこわばっていて、「両腕の朝を解放するにはまだ時間が必要で/うずうずする室温に/上へ上へと沈んでいく」のだ。中村の詩集を読んだときに”逡巡”を感じたのだが、ここでも話者は彷徨っている。しかし、それは案外に満たされたものがある彷徨いであるようだ。だから、美しい気持ちがそれを支えている。

   群青に溶けた夕日にはいくつもの祈りの傷がついていた。触れようとするとわずかに
   放電のきしみがあって、すべては地面に吸いこまれてしまう。わたしには、誰もい
   ないので、冬には羽毛を集めて眠っている。クーイーはたぶん、わたしの過ごして
   いる季節とは全く別の季節にいて、渡ったり手紙を書いたりしているんだと思う。
                                (最終連前半)

 ここもとても美しい独白となっている。おそらく少し寂しいのだろうけれども、しっかりとそれを受容できる決意があるようだ。
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