○大学院1年の頃⑦
*台湾の旅・その3
翌日は中央研究院に出かけた。ここは特別展観なのだが、実際は展示室が完備されており、しかし一般には公開していないようで、参観者は我々だけだった。
まずは研究院の方の挨拶があり、その方の斡旋で、居延漢簡の研究所と図録を希望者が購入した。20世紀初頭に、中国内蒙古自治区で発掘された1万点にも及ぶ居延漢簡は、紆余曲折を経て、ここ台湾中央研究院が所蔵しているのである。
展示室にはそのうちの数点が展示されていたが、中でも感動したのは「永元器物簿」である。これは78枚の木簡が当時のままに麻縄で綴られて発掘されたものである。(ちなみに木簡を縄で綴った形から「冊」の漢字ができた。「典」はその「冊」が机の上に置かれている様を表している。)当時はこれを巻いて保存し、読むときはそれを広げながら読んだのである。
私は本でよく知っているその実物が目の前に置かれているのに感激したとともに、その文字に使われる墨が薄いことに驚いた。また、墨は青みがかっており、まるで青墨で書いたかのような感じである。また、写真ではややはっきりしなかった文字が、実にくっきりとしており、砂漠の砂の中に埋もれて、その保存状態が大変よかったことをあらわしていた。私はその永元器物簿をずっと見ていたので、他の展示物は印象に残っていない。甲骨文や青銅器の名品もあったように記憶はしているのだが。
1階には拓本が展示されていた。これまた名品揃いで、特に北魏から唐代にかけての名品が印象に残っている。時代の新しいものは印象に残っていないが、清代末期に行われた科挙の合格者の一覧を書いて掲示した巻物が印象に残っている。確か、その巻物の前で、引率の岡本先生が「1位で合格すると、この巻物の一番初めに名前が記されるのでその人を「状元」と呼ぶんだよ。」と教えてくださったのを覚えている。
この後市内にある美術館で、明清の絵を見たように思うのだが、これまた記憶が定かではない。その後は中正紀念堂へ出かけた。写真がいろいろ残っているが、これまた印象に残っていない。台湾の人には蒋介石を祀るところということで、大切なところだそうだが、我々日本人には一つの観光地としてしかとらえられなかった。
この日もややおおざっぱな日程で、できれば故宮にもう一度訪れたいと思ったくらいだった。
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