この時は、約3週間にわたって、大雪山、知床、礼文、ニセコ方面をまわる旅だった。その旅の途中、いくつもの山々の姿を眺める機会があった。
十勝岳と羅臼岳は初めての北海道旅行の時にその姿を眺め感動したのを覚えている。しかしその時は雪に覆われ、人を寄せ付けない山に見えた。今回の旅では、白雲岳の山頂からトムラウシ、十勝岳へと続く山並みを眺め、このまま南下すれば(どれくらいかかるかわからないが)やがては十勝岳に至るのだと思った。あの時と同じく知床峠から眺める羅臼岳は緑濃く、雪をかぶった時以上の容量で私の眼前に迫ってきた。
トムラウシと斜里岳を見たのは初めてだった。斜里岳は初めての北海道旅行の時に見ていたのだろうが、記憶がなかった。斜里岳はその長い裾野と、その中にきりっとそびえ立つ険峻な山並みの姿が印象的だった。トムラウシは、白雲岳の山頂から、遙か遙か遠くに、三つのピークを並べている姿が眺められた。高山植物が美しい、なかなか登れない山であると聞いていたので、実際に眺めてみて、いつの日かあの山に登ってみたい、と思うようになった。
その翌年から、そうした山々を一つずつ登頂するようになるのである。いずれも、まず山の姿を眺めて感動し、その感動が登頂につながっている、というのは、我ながらなかなか興味深いことである。