桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

登山の記2・初めての登山②

2006-02-17 21:21:13 | 旅行記

結局ガスの取れぬまま、燕山荘に到着した。燕岳は花崗岩質の山で、地面の砂は小学校の校庭に敷いてあるのと同じだった。小屋の前には雷鳥が何羽かうろうろしており、人が近寄っても逃げないのが面白かった。

小屋は一杯だった。夕食に何を食べたのかよく覚えていないが、食後はすぐに就寝したのを覚えている。確か、二畳に三人くらいが寝るので、窮屈この上ない。しかも、見ず知らずの人と一緒である。とまどっていると、山小屋ではこんなことは当たり前と叔父に言われ、また、疲れ切ってもいたので、そのまま寝てしまった。

翌朝早く出発したが、やはりガスの中である。しかも、今日はどこまで行くのか知らされていない。どうやら私の歩き具合によって常念岳まででやめるか、蝶ヶ岳まで行くかを判断するつもりだったらしい。

ガスの中を大天井岳まで尾根を進んでいった。大天井小屋ではガスも晴れ始め、空が明るくなってきた。常念岳の向かって進んでいくとガスもすっかり晴れ、雄大な光景が広がってきた。見回すとあちこちにお花畑が見えるのだが、登山道から外れてはいけないと叔父に言われているので、そこへ行くわけにもいかない。足下に咲いている花々を眺めて我慢する。

常念岳が見えてくると、ひたすら下りとなった。下りきると常念小屋のある常念乗越に着いた。ここでお昼にした。出発するとき、なぜかラーメンを持たされた。鍋もガスコンロもないのにどうやって食べるのだろう、と思っていた。そして、青くて丸い缶のような物も持たされた。降るとカシャカシャ音がし、水が入っているようだが、開け口も何もない。何に使うのだろうかと思っていた。

すると叔父はその缶のような物に器用に穴を開け、見たこともない器具をそれに取り付け、小さな鍋を載せ、ポリタンクから水を入れ、火を付けた。その火でタバコにも火を付けて吸い始めた。一服するうちにお湯が沸き、ラーメンを割り入れ、スープを入れて出来上がり。叔父は美味しそうに食べるが、私は大好きなラーメンのはずなのに、なぜかあまり美味しくない。

食後、いよいよ常念岳への登りにかかることになった。叔父は私の様子を見て、このまま常念岳を越え、蝶ヶ岳まで行けると踏んだらしい。しかし、私は常念乗越まで延々下ってきた分をまた登らなければならないかと思うとかなり憂鬱だった。しかも目の前には小屋がある、朝も薄暗いうちから動き始めている。どうしてここで今日はやめにしないのか、と思っていたのである。

コメント
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