はぐれ遍路のひとりごと

観ながら歩く年寄りのグダグダ紀行

「海から富士山・剣ヶ峰」2日目-2

2013-07-20 10:13:17 | 富士山
          

 浅間神社奥宮の横からお鉢の前の広場に出る。お鉢に残った雪も多いが、剣ヶ峰の直下にも雪が残っている。
これは7月下旬では見られない景色で、今年の登山が早い時季だったことの象徴だ。

 例年この広場に座り込んで昼飯を食べるのだが、どうも食欲がない。昨日の早朝に買ったコンビニの握飯が
3個も残っているのに困ったものだ。しかし何か腹に入れないと後が持たない、とケースに入ったバナナと
妻から押し付けられた金鍔を無理して食べた。
どうも体調が良くない。高山病ではないがともかく疲れた。平らな道でも、ダラダラした歩きしかできないし
登りになればすぐ息切れがする。目標だった剣ヶ峰はもう目の前だから間違いなく登れるだろうが、
お鉢巡りはどうだろう? お鉢は通常なら1時間20分で回れるが、この調子では2時間以上掛かりそうだ。
そうなると銀名水を下り始めるのが12時半から1時ごろで新五合目に着くのは5時か6時か。
止めた、止めた。お鉢巡りは止めた。若し6時の終バスに乗れなかったらもう1泊しなければならなくなる。

          

 お鉢巡りを止める決断をすると気が楽になったのか、最後の難関の剣ヶ峰の馬の背が案外楽に登れた。
そしてようやく剣ヶ峰に10時35分到着。朝、山頂行きを諦めないで良かった。
矢張り今年はまだ登山客が少ない。例年写真待ちをしなければならない剣ヶ峰もほぼ自由に撮れる。
来年もこの早い時期を狙いたいが、浅間さんが開いてなければ目的を達成できない。困ったものだ。

 三角点の所から下を覗くとお鉢巡りの人が目に入った。

          

これは残雪の上で遊んでいるのではなく、残雪の上にある狭いお鉢巡りの道を慎重に歩いている登山者です。
滑れば下の広場までは滑落しそうですが、左程の怪我は負わないだろう。
こんな道は普段なら喜んで歩くのだが今の体調では諦めるしかない。
馬の背の頂点からほんの10mもない雪道だが、そこまで歩く元気もなかった。

 だがチョット待てよ! 昨日まで富士宮口の登山道は通行禁止だった。
はっきりした理由は分からないが多分登山道の残雪の為だろう。しかし今日登ってきた登山道はおろか
その付近にも雪の形跡は何もなかった。雪を見たのは例年ある沢の場所の万年雪でしかない。
しかもその残雪は登山道から行くには一苦労の場所にある。
なのに山頂のお鉢巡りの道は、こんなに雪に覆われて細い踏み跡しかない場所がある。
その雪道の付近に「通行禁止」「通行注意」の立札も建っていない。

 話は先の事になるが、この雪の事を纏めて書いてしまいます。
実は帰りの富士宮口登山道入口にスタッフの名札をぶら下げた男性が5・6人立っていた。県の職員かな?
そこで思い切って聞いてみた。
「富士宮登山道は昨日まで通行禁止だったけど理由はなんですか?」
「登山者の安全を確保するためです」
「登山道に雪の痕跡は無かったけど雪が理由ではないのですね?」
「登山道には雪は無くても近くにあるとすぐ上で遊び人がいるから------」
「でも剣ヶ峰の下のお鉢巡りの登山道は雪に覆われていて、雪の上を歩いていたけど、あれはいいいの?」
暫く考えていて
「山頂は浅間さんの物で県の権限は及ばないから仕方ないし、責任は浅間さんですね」
そんな無責任な、と思ったが更に追及の手を緩めず
「御殿場口は登山道の近くに雪が残っていたけど、何故山開きの日から開通していたの?」
(御殿場口を下り始めると登山道から雪渓が見えていた。その雪渓までなら楽に行けそうだった)
そんな意地の悪い質問に県の職員(?)は、しばし無言の後
「ウーン! 富士宮口の通行禁止は上役の責任逃れだったのかなー」だって。
それ以上追い詰めるのは意地悪すぎる。
時計を見るとバスの時間も後5分しかない。慌ててバス停に向かった。

 話は後先になってしまったが、剣ヶ峰を下り富士宮山頂に戻ってから銀名水に行く。
銀名水は鞍部の場所にあるが一応御殿場口の山頂で、ここからは火口越しに剣ヶ峰が見える。
その銀名水には昔から小屋が建っているが、私はこの小屋が開いているのを見た覚えがない。
それが今年は小屋の戸に貼紙がしてあり「富士山頂臨時郵便局 7月13日開局」とあった。
なるほど今まで郵便局は富士宮山頂の浅間神社の一角に間借りをしていたが、それが世界遺産登録による
登山者の増加を見込んで独立するのだろう。

          

 銀名水の歩き出したのは11時10分だった。
去年なら銀名水から新5合目のバス停まで3時間で着いている。今から下れば2時10分には着いて2時半の
バスには十分間に合うはずだが、今年は------- ウーン!駄目だろう。
それなら次のバスは6時だからゆっくり歩いて行こう。そんな決断をして下りだした。

 梅雨明けも間もないこの時季なので、富士宮口は登山者が少なかった。
元より登山者の少ない御殿場口は、歩いている人がいるか等と思っていたが、その考えは完全に打ち砕かれた。
さすが登ってくる人は少なかったが下山する人は何故か多い。
昨年7月31日に下った時は、下にも上にも歩いている人の姿を見ない時があったが、今年は常に登山者の姿が
見えていた。何故だろう?色々考えて出た結論は“この時季に登る人は富士山初心者は居ないだろうから、
変化を求めて下山コースを変える人が多かった”のではないか。

 登りに比べ下りは流石に楽だった。登りでは抜かされる一方の私だったが下りに入ると抜く機会が多くなった。
でもバスに間に合わせる気を起こすのは止めよう。慌てるとろくなことは起きない。
そんな気持ちで下っていると時ある考えが閃いた。“そうだどうせお鉢巡りをやらなかったのだから、下りも
何時ものコースと変えて、御殿場口から富士宮8合に抜ける横道を久し振りに歩いてみよう”

 この横道は御殿場口7合6勺の避難小屋から富士宮口8合目に抜ける平坦な道で、昔は山小屋の荷物を運ぶ
馬が利用していた、知る人が知る道だ。
私もかって会社の仲間や近所の人を案内したり、子供や孫を連れて一泊で富士山に登るときは常に利用して
いた道だ。それが6年前に上の孫を連れて歩いたとき、富士宮口側でこの道をロープで塞ぎ通行禁止の貼紙を
してあった。本来なら8合目の小屋で理由を聞くべきだったが、孫を連れていたし御殿場口の小屋に宿泊の予約も
入れてあったので、黙ってテープを跨いで御殿場口まで歩いたことがある。勿論道は安全で何の支障もなかった。
 その日小屋に同宿した親子がいて、道を知らなかったので8合目で聞いたところ、散々嫌味を言われ、もう二度
富士山には来たくないと話をしていた。
 それ後いつだったか、通行禁止の貼紙の前に小屋の人がいたので、その理由を聞いた事がある。
でも結局「危険だ」「自己責任だ」「俺に言われても困る」と返って来ただけだった。
私流に通行禁止の理由を考えるなら、この道が知られてしまうと富士宮口から御殿場口に登山者が流れてしまうと
富士宮側は恐れているのではと思う。
確かにそれでは富士宮側の小屋は困るだろうから、看板などで案内する事はないが「通行禁止」戴けないと思う。

 私が仲間やを子や孫を連れてこの道を利用した理由は
1.ご来光を見たい   - 富士宮口から綺麗なご来光は見る事ができないが、御殿場口は何処からでも
                  ご来光を見る事ができる。
2.山小屋が空いている - 当時御殿場口は登る人は少なく、マイカー登山が増えて下山する人も減った。
                  最近はプリンスルートができ、7合8勺の小屋は混むようになった。             
3.登山道が空いている - 時折渋滞が発生する富士宮口と違い、御殿場口は空いている。

他にも余分な荷物を泊まった小屋に預けて山頂に行ける。等の事でこの横道を利用していた。

          

 前置きばかり長くなってしまったが、7合9勺(最近は8合目と言っているらしい)の赤岩館の前で
今なら富士宮8合目の小屋は開いていないので、嫌な思いはしないで済む。と、休憩しながらこの横道を
歩く事を決断した。
 それにしてもかって御殿場口の山小屋は遅い開店、早い閉店だったのに、今年は既に赤岩館は営業していた。
同じような標高にある富士宮8合はまだ閉まっていたのに、これを見ただけでも御殿場口の勢いが感じられる。

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