みちのくの山野草

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2975 賢治、喜善、中館武左衛門(#2) 

2012-10-28 09:00:00 | 賢治渉猟
 さて、佐々木喜善の日記がますます気になってきた。とりわけ〝中館さん〟が誰なのかが。そこで前掲書『宮沢賢治と遠野』(遠野市立博物館)を見直すと次のようなことも書かれていた。
三 晩年の宮沢賢治と佐々木喜善
 しかし、喜善と賢治の関係が再び見えてくるのは、昭和七年(一九三二)、仙台で暮らすようになった喜善が花巻でエスペラントの講習会を開くことになり、その折に賢治を訪ねるようになってからです。講習会は二度開かれていて、第一回は四月一二日から一九日まで、第二回は五月二〇日から二八日まででした。この時の様子は、喜善の日記に詳しく書かれています。
<『宮沢賢治と遠野』(遠野市立博物館)12pより>
 ならばと思い立って、過日遠野博物館に行ってそのあたりの事情を聞いてみた。すると、遠野市立図書館に佐々木喜善の日記があるということだったから、閲覧させてもらった。もしかすると〝中館さん〟の氏名の〝名〟の方ももどこかに書いているのではなかろうかと期待しながら…。
 ちなみに、この第一回の講習会が花巻で行われていた頃の佐々木喜善の日記は以下の通りであった。
  四月十二日 雨 
 花巻にエスペラント講習会があるので朝十時の汽車に乗る。出ようとしていたら柴田町の某といふ人が来て民間伝承を一冊売る。汽車で雨中さびし。大和さんに着く、二時半頃、夜雨中、明治屋といふところに行つて講習を始める。十六、七人である。発音についても質も生意気が一人ある。邪魔になつてし様がなし。どこにもあるものである。十一時に寝る。
 妻に安着の知らせ出す。
  四月十三日 風
 午前中、中舘に行く。午後宮沢賢治氏の病室へ行つて三、四時間話す。夜食は中舘さんによばれる。講習所で十一時半頃まで話してかへる。日詰の佐藤春文さんの妻君に会ふ。よほど慣れて来た。
 講習会をやつていると盛にラッパや軍歌がきこえた。こんやいたちぺい稲荷さんが満州より帰らへるといふのである。今夜此処で二ヶ所の神様がかへられるさうである。
  四月十四日 晴
 午前中、中舘からむかへが来たので行つて見る。二、三時間聞いて□□の神々の戦地へ御立ちになることなど聞く。息子さんが東京から帰つて来て、今夜十二時過ぎまで話しこんでかへる。
 妻に葉書を出す。岡村君から手紙来る。
  四月十五日 大雨  
 とてもの雨だつた。夜一時頃まで話した。いろいろな話があつた。帰へり寝たのは二時であつた。これではとても体がたまらぬと思つた。武藤君から葉書が来ていた。
  四月十六日 雨
 朝、中舘へ行つて主人と話をしているうちに雨が降り出し、傘をかりて来た。其足で宮沢君のところへ行つて夕方まで話した。それからまた夜は雨に降られて帰つた。宮沢君のところではいろいろのものを作つて御馳走になつた。
  四月十七日 雨
 やつぱり雨である。今日も講習会後いろいろな話をして一時頃になつた。今日は大和さんの家の月並祭であつて五十銭玉串を上げた。
  四月十八日 雨
 朝の中は天気がよかつたので、また今日きりなので、朝に大和さんに案内されて鱒沢君のところへ行き、その足で島君のところへ行き、それから宮沢君へ行き、詩集を買ったり、おひるを御馳走になつたり、帰ると明治屋から御馳走によばれてゐたので六時頃行き、隣家の呉服屋の主人と二、三人でごちそうになり、今日だけの講習なので、皆あとに残つて話をし十二時頃かへつた。夜雨模様であつた。
  四月十九日 雨
 夜中からまた大雨、十時半で立とうとしていると、明治屋さんが来て、照井さんと来て御土産やら謝礼やら十二円貰つた。そこに島君と杉村君が来て話がはづみ、遂に一時半まで伸びた。自動車で停車場まで送られたが発車間際にかけこんでやつと間に合つた。…
<『佐々木喜善全集 Ⅳ』(遠野市博物館)546p~より>
残念ながら〝中舘〟の下の〝名〟についてはこの期間の日記には書かれていなかった。そして、そもそも『宮沢賢治と遠野』の12pにあった昭和7年4月13日の日記中の〝中館〟はこの『佐々木喜善全集 Ⅳ』所収の同日の佐々木喜善日記では〝中舘〟となっていた。一体佐々木喜善の日記そのものには〝中舘〟と書いているのだろうかそれとも〝中館〟となっているのだろうか。いずれも遠野市立博物館の出版なので近いうちに同館へ行って確認してみたい。

 それでは2回目のエスペラント講習会の場合にはどうなっているのだろうか。期待しながら頁を捲ってみた。

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