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【『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))の表紙】
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五 とんでもない悪女であるという濡れ衣
さて、『事故のてんまつ』の出版に関わる故人の名誉毀損と差別問題については出版差し止めの仮処分申請が出され、筑摩と遺族側との話し合いの結果、絶版回収ということで和解したし、筑摩は「総括見解」も公にして詫びた。
一方、これと同じ構図にあった〝「新発見の252c」等の公開〟の方はどうであったかというと、その公開後、〈高瀬露悪女伝説〉が全国に流布してしまったと言える。のみならず、賢治に関して実績のある筑摩が活字にしてしまったからなおのことであろう、件の(くだん )推定群⑴~⑺は独り歩きしてしまって「事実」となった。その結果、その「事実」に基づいて少なからぬ賢治研究家が、露をとんでもない悪女であるとした論考等を著している実態がある。不公平で極めて残念なことだ。
ただし、件の(くだん )「新発見の252c」とか、「判然としている」とかの客観的な典拠がいくら調べても見つからなかったことなどから逆に示唆されて、この〈露悪女伝説〉を検証してみる必要があると判断した。そしてその検証等の結果、露は賢治から感謝されることこそあれ、露が悪女であったことを裏付けるものは何もないことが分かったから、この〈悪女伝説〉は創られたものであるということを実証できた。そこで、露は悪女の濡れ衣を着せられたということがはっきりしたので、私たちは、『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(森義真、上田哲、鈴木守共著、ツーワンライフ出版)においてそのことを公にした。
なお、〔聖女のさましてちかづけるもの〕のモデルが高瀬露だから露は悪女だと主張する人も中にはいるが、その有力なモデルは他におり、それが露であることの蓋然性は限りなくゼロに近いということを始めとして、露が悪女であることの客観的な根拠は何一つないということを私は実証できたので、露は悪女とは言えないということを『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ社)』でも公にした。
ところが、なぜ「新発見の252c」とし、はたまた、「判然としている」と断定できたのかというその客観的な典拠を筑摩は我々読者に相変わらず明示してくれない。したがって現段階では、〝「新発見の252c」等の公開〟は結果的に露に「とんでもない悪女である」という濡れ衣を着せてしまった、と私は言わざるを得ない。
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☆『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/20/a2fa88a84d3910d7fdeeca669a068dd1.png)
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〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守 ☎ 0198-24-9813
《新刊案内》
この度、拙著『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』
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を出版した。その最大の切っ掛けは、今から約半世紀以上も前に私の恩師でもあり、賢治の甥(妹シゲの長男)である岩田純蔵教授が目の前で、
賢治はあまりにも聖人・君子化され過ぎてしまって、実は私はいろいろなことを知っているのだが、そのようなことはおいそれとは喋れなくなってしまった。
と嘆いたことである。そして、私は定年後ここまでの16年間ほどそのことに関して追究してきた結果、それに対する私なりの答が出た。延いては、
小学校の国語教科書で、嘘かも知れない賢治終焉前日の面談をあたかも事実であるかの如くに教えている現実が今でもあるが、純真な子どもたちを騙している虞れのあるこのようなことをこのまま続けていていいのですか。もう止めていただきたい。
という課題があることを知ったので、 『校本宮澤賢治全集』には幾つかの杜撰な点があるから、とりわけ未来の子どもたちのために検証をし直し、どうかそれらの解消をしていただきたい。
と世に訴えたいという想いがふつふつと沸き起こってきたことが、今回の拙著出版の最大の理由である。しかしながら、数多おられる才気煥発・博覧強記の宮澤賢治研究者の方々の論考等を何度も目にしてきているので、非才な私にはなおさらにその追究は無謀なことだから諦めようかなという考えが何度か過った。……のだが、方法論としては次のようなことを心掛ければ非才な私でもなんとかなりそうだと直感した。
まず、周知のようにデカルトは『方法序説』の中で、
きわめてゆっくりと歩む人でも、つねにまっすぐな道をたどるなら、走りながらも道をそれてしまう人よりも、はるかに前進することができる。
と述べていることを私は思い出した。同時に、石井洋二郎氏が、 あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること
という、研究における方法論を教えてくれていることもである。すると、この基本を心掛けて取り組めばなんとかなるだろうという根拠のない自信が生まれ、歩き出すことにした。
そして歩いていると、ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているということを知った。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
そうして粘り強く歩き続けていたならば、私にも自分なりの賢治研究が出来た。しかも、それらは従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと嗤われそうなものが多かったのだが、そのような私の研究結果について、入沢康夫氏や大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、私はその研究結果に対して自信を増している。ちなみに、私が検証出来た仮説に対して、現時点で反例を突きつけて下さった方はまだ誰一人いない。
そこで、私が今までに辿り着けた事柄を述べたのが、この拙著『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))であり、その目次は下掲のとおりである。
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