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みちのくの山野草

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『宮沢賢治 その愛と性』を安易に典拠とすることは危険

2019-09-08 16:00:00 | 子どもたちに嘘の賢治はもう教えたくない
《ルリソウ》(平成31年5月25日撮影)
〈高瀬露悪女伝説〉は重大な人権問題だ

 さて前回、
    『宮沢賢治 その愛と性』における露に関する記述には儀府成一の創作や、フィクションが含まれている。
ということを、はからずも著者の儀府自身が私たちにそのことを教えてくれていることを知った。となれば、高瀬露に関する論考において『宮沢賢治 その愛と性』を安易に典拠とすることは危険なようだ。そこでそのことを、森荘巳池の「昭和六年七月七日の日記」と儀府成一の「やさしい悪魔」を比較することによって、以下に検証してみる。
 なお、〝赤色文字〟になっている部分は二人の著作において全く同じ部分であり、〝橙色文字〟部分は内容的に同じ部分であることを示している。

 例えば、「昭和六年七月七日の日記」の中の、
 彼女は彼女の勤めている学校のある村に、もはや家も借りてあり、世帯道具もととのえてその家に迎え、今すぐにも結婚生活を始められるように、たのしく生活を設計していた。
           〈『宮澤賢治と三人の女性』(森荘已池著、人文書房)89p〉
に対しては、「やさしい悪魔」では次のように書かれている。
 彼女は、宮沢賢治との結婚というきわめて大胆な設計とたてて、ひとりひそかに、着々とその準備をすすめていたからだ。自分の勤めている学校のある村にすでにこっそり借り、あたらしい世帯道具も一応買いそろえてあすからでも結婚生活が営めるれれる手筈をととのえていたのだ
             <『宮沢賢治 その愛と生』(儀府成一著、芸術生活社)226p>
 そこでこれらを見比べてみると、時系列的には
  ・「昭和六年七月七日の日記」(『宮沢賢治と三人の女性』(昭和24年)所収)
  ・「やさしい悪魔」(『宮沢賢治 その愛と生』(芸術生活社、昭和47年)所収)
だから、儀府は裏付けを取ったり検証したりして書いた訳ではなく、「昭和六年七月七日の日記」を元にしてそれをアレンジしたものであると言わざるを得ないであろう。そう、上田哲がいみじくも「森荘巳池らの文章を下敷きにして勝手にふやかしたものに過ぎない」(『七尾論叢 第11号』76pより)と言うとおりで、まさに〝ふやかしたもの〟と言わざるを得ない。
 ということは、氏名を仮名(内村康江)にしたことをいいことに、面白おかしく無責任にでっち上げたものとしか私には思えない。だからこその、言葉にすることさえも憚られるようことをさもあったかの如くに、儀府は書き散らしているのか、と私は得心した。
 なんともまあ、
 儀府成一著『宮沢賢治 その愛と性』の中の露に関する記述を、裏付けもなく、検証もせずに論考等の典拠としては使えない。
ということを著者自身が教えている、と言えるのだ。どうやらこれでは、高瀬露に関する論考等において、『宮沢賢治 その愛と性』を安易に典拠とすることは危険だと私は断定せねばならない。
 そういえば、上田哲が、
 このような本が研究書と呼ばれまかり通り研究文献目録搭載されている。日本の文学研究のレベルの低さが悲しくなった。
            <『七尾論叢 第11号』76pより>
と呆れ、嘆き悲しんでいたっけ。

 そこで、「以前の気掛かり」に戻ってみれば、
 この「やさしい悪魔」を一度読んだならばその印象は強烈だから、これを読んだ人の中には、裏付けを取ることも、まして検証することさえもしない研究者であるならばなおのこと、高瀬露のことを、「感情をむき出しにし、おせっかいと言えるほど積極的に賢治を求めた高瀬露について、賢治研究者や伝記作者たちは手きびしい言及を多く残している。失恋後は賢治の悪口を言って回ったひどい女、ひとり相撲の恋愛を認識できなかったバカ女、感情をあらわにし過ぎた異常者、勘違いおせっかい女……」というようなことを言い募るかも知れないですね。
と嘆く人も中にはいるだろう、と私はごちた。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月28日付『岩手日報』一面〉
を先頃出版いたしましたのでご案内申し上げます。
 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
 そこで、本当の賢治が明らかにされてしまったので賢治学会は困ってしまい、慌ててこのようなことをしたのではないか、と今話題になっている本です。
 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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