みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

大分 酒井藤麿

2020-08-21 12:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)、吉田矩彦氏所蔵〉

 では今度は、九州は大分からの追悼である。
  大分 酒井 藤麿  
農の苦しみ且つ泣き、且つ悦びて来た私は松田先生の面影を追慕して
一、昭和維新の秋の農業界に指導、同情はしてくれる有識者は夛いが 小作の艱苦を経て、それを把握しそれを立地として先生は苦界を以つてする。所謂昭和といへども明治時潮に劣る。改善不徹底あきたらぬ。孤兒百姓の□の味方。啓蒙着実。二宮尊徳先生。とかくやとしのばれます。母校で先ず優等生はすべからく農業をせよと。此の言葉は眞に農業を体得した人でなければ言へない言葉です。
             〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)33p〉

 あらためて、甚次郎は東北の片隅の一指導者ではなく、全国的な指導者であったということを納得した。それも、「小作の艱苦を経て、それを把握しそれを立地とし」た指導者であったと受けとめていたような人があったのだ、ということもである。
 やはり、当時の松田甚次郎の評価は全国的なものであり、しかも頗る高かったと言える。そしてまた、敬慕されていたということもこれでほぼ間違い。では、何故そうだったのかというと、「同情はしてくれる有識者」などとは違って、甚次郎は「眞に農業を体得した人」ていることを彼等は肌で覚ったからであろう。とりわけ「土に叫ぶ」を通じてである。逆に言えば、だからこそ同書は、驚異的な大ベストセラーになったのだ、きっと。

 にもかかわらず戦後になると、少なくとも賢治周辺からは松田甚次郎の名が消え去っていったのは何故なのだろうか、という疑問が私には益々募ってきた。

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