みちのくの山野草

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思想統制の徹底

2019-01-28 16:00:00 | 賢師と賢治
《今はなき、外臺の大合歓木》(平成28年7月16日撮影)

 さて、昭和3年にはこんなこともあったということを私は迂闊にも全く知らずにいた。名須川はこう述べていたからだ。
 全国思想統制の嵐が猛威をふるい、「国体観念」「国民精神」が叫ばれてきた。
 「文相の訓辞要領▽学部長会議△」との標題で報じているが、その訓辞要旨では「学生生徒をして建国の本義を体得せしめ国体観念を明証ならしめて確乎たる不抜なる国民精神を養せしめるが第一義であります」と強調している(岩手日報 昭和三年七月三日)。
 「悪思想撲滅を期する。新設特高課の機能各地域に主任警務官を置いて水も漏らさぬ警戒振り」とか「特高課活動開始赤鬼退治の方針で」(以上、岩手日報、昭和三年七月五日・一四日)などど新聞もまた騒がしく報じている。

   教師と警官が連絡を執って 生徒の家庭を訪問 小中学生の思想善導

(前略)結局小中学生徒から思想善導に努力し漸次学生の思想悪化を防止する外ないと云うことになった其方法は全国中小学校の教師と地方警察官が絶えず連絡を執り日常家庭にも訪問し注意をなし月に一二回位思想係りの警察官、検事が学校に出張して善導するというのである(以下省略)  (岩手日報 昭和三年七月二二日)

 かくして、岩手県でも七月三〇日に中小学校長会議を開会、栗田学務部長は「学生生徒をして建国の本義を体得せしめ国体観念を明徴ならしめ以て確乎不抜なる国民精神を涵養せしめる事が第一義であります」との「思想善導の訓示」をし…(投稿者略)…
       〈『岩手の歴史と風土――岩手史学研究80号記念特集』(岩手史学会)492p~〉

 私は、当時権力がこのような深慮遠謀(下心)をもって、小中学生を自分たちにとって都合よく「思想善導」しようと企てていたということを今迄知らずにいた。特に、「全国中小学校の教師と地方警察官が絶えず連絡を執り日常家庭にも訪問し注意をなし」ということについては、胸が痛む。教師が権力に阿ていたともとれるし、大人は、小中学生の純真さを逆手にとって利用しようとしたとも言えよう。
 そういえば、かの満蒙開拓青少年義勇軍の応募年齢は「数えで16~19歳」、の少年たちだった。

《僕は満州へ行きます(小学校の校庭で門出の答辞を読む) 》

《大地で持つ初めての鍬》

              <『写真集満蒙開拓青少年義勇軍』(全国拓友協議会編、家の光協会)より>
どの写真を見ても少年というよりはあどけなくいたいけな子供達ばかりである。大人が素晴らしいところだと嘯き、子供達を騙したということを否定できない。おそらく、この「小中学生徒の思想善導」もこれも同じ思惑だったのかもしれない。
 そこで急に気になり出すのが、賢治が羅須地人協会時代に接した人たちは殆どが賢治よりも歳が一回り若い人達だったから、賢治の心の内でも無意識にそのような思惑が働いていたということがなかったであろうか、ということである。そして、いやいや、決してそうでなかったということを私はただただ願うばかりだ。

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

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 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
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 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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