「下根子桜」のヤマガシュウの今が気になって、この5月21日そこに立ち寄ってみたのだが、
《1 「賢治詩碑」を撮っていたならば》(平成29年5月21日撮影)
《2 そこへタクシーの運転手が来訪者を案内してやって来た》(平成29年5月21日撮影)
説明が否応なく聞こえてきて、私は驚いてしまった。
ヒデリは本当はヒドリなのです。「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです。
と断定しながらガイドしていたからだ。
一体、なんで今頃になってさえも相変わらず「ヒドリ=一人」説が生き残っているかと、私は怒りを通り越して嘆くしかなかった。「雨ニモマケズ」を一度落ち着いて読み上げてみれば、「ヒドリ」以外は皆いわゆる標準語であることを直ぐに気付くはずだ。ならば、この「ヒドリ」もそれであることを殆どの人々は否定できなかろう。そこで、もし『「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです』<*1>ということであれば、この場合もいわば方言と言えるから、かなり問題がある。
したがって、安易に『「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです』などと断定しながらガイドするということは、折角花巻に賢治を訪ねてやって来た人に対して無責任なことだ。せめて、そういう説もかつてあったようです、ならばまだしも。
さりながら私はここでふと気付く。この『少なくとも「ヒドリ」以外は皆いわゆる標準語』という論理を軽視したような断定調のガイドの仕方も、いくつかのあやかしとも言える賢治に関する「通説」が現在も罷り通っているということも、実は似たり寄ったりな構図をしているのではなかろうかということに、だ。
例えば次のような賢治に関する次のような項目は皆そうだ。
㈠「独居自炊」とは言い切れない
㈡「大正15年12月2日の上京」の牽強付会
㈢「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」賢治
㈣ 誤認「昭和二年は非常な寒い氣候…ひどい凶作」
㈤ 昭和二年の上京と三か月のチェロ猛勉強
㈥ 賢治の稲作指導の限界
㈦「下根子桜」撤退と「陸軍大演習」
㈧ あやかし「高瀬露悪女伝説」
基本に忠実に私が検証してみれば、これらに関しては皆(つまり賢治に関して常識的におかしいというところは、殆ど皆)「通説」に問題があるからである(詳しくは、〝『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』〟をご覧いただきたい)。
だから、このようなあやかしが殆ど再検証もなされずに、それがあたかも「真実」であるかの如くに賢治研究家の論文や論考の中にも今でも少なからず横溢していることと先の無責任なガイドの仕方とは通底していると、私はそれこそ確信を持って断定できる。ましてこのことを知ったら、石井洋二郎氏はさぞかし、ここにも「太った豚よりも痩せたソクラテス」があったのかと嘆くことしきりだろう。
つまり、なにも先のガイドの仕方だけが問題だというわけではなく、それ以上に「賢治研究」においては大きな問題があると言える。しかも、殆どの研究家がそのことを追究することは元より、言及することすら避けているかのように私からは見える。それ故に、歴史から後々厳しい裁きを受けることが避けられないのではなかろうかという懸念がこの頃はいつもつきまとう。
<*1:投稿者註> 岩手にずっと長年住んできて、「一人(ひとり)」を訛って「ヒドリ」と発音したこともなければ、そのように発音が聞こえる人に出会ったこともともに私にはない。
続きへ。
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《鈴木 守著作新刊案内》
この度、お知らせしておりました『「羅須地人協会時代」再検証-「賢治研究」の更なる発展のために-』が出来いたしました。
◇『「羅須地人協会時代」再検証-「賢治研究」の更なる発展のために-』(定価 500円、税込み)
本書の購入をご希望なさる方がおられましたならば、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければまず本書を郵送いたします。到着後、その代金として500円(送料込)分の郵便切手をお送り下さい。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守
電話 0198-24-9813
なお、本書は拙ブログ『宮澤賢治の里より』あるいは『みちのくの山野草』に所収の、
『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』
のダイジェスト版です。さらに詳しく知りたい方は拙ブログにてご覧下さい。
また、『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』はブログ上の出版ゆえ、紙媒体のものはございません。
《鈴木 守著作既刊案内》
◇『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)
ご注文の仕方は上と同様です。
なお、こちらは『宮沢賢治イーハトーブ館』においても販売しております。
☆『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』 ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著) ★『「羅須地人協会時代」検証』(電子出版)
『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』、『宮澤賢治と高瀬露』のご注文につきましても上と同様ですが、こちらの場合はそれぞれ1,000円分(送料込)の郵便切手をお送り下さい。また、こちらも『宮沢賢治イーハトーブ館』において販売しております。
☆『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』 ☆『羅須地人協会の真実-賢治昭和2年の上京-』 ☆『羅須地人協会の終焉-その真実-』
ただし、『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』は在庫がございません。
《1 「賢治詩碑」を撮っていたならば》(平成29年5月21日撮影)
《2 そこへタクシーの運転手が来訪者を案内してやって来た》(平成29年5月21日撮影)
説明が否応なく聞こえてきて、私は驚いてしまった。
ヒデリは本当はヒドリなのです。「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです。
と断定しながらガイドしていたからだ。
一体、なんで今頃になってさえも相変わらず「ヒドリ=一人」説が生き残っているかと、私は怒りを通り越して嘆くしかなかった。「雨ニモマケズ」を一度落ち着いて読み上げてみれば、「ヒドリ」以外は皆いわゆる標準語であることを直ぐに気付くはずだ。ならば、この「ヒドリ」もそれであることを殆どの人々は否定できなかろう。そこで、もし『「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです』<*1>ということであれば、この場合もいわば方言と言えるから、かなり問題がある。
したがって、安易に『「一人(ひとり)」が訛ってヒドリになったのです』などと断定しながらガイドするということは、折角花巻に賢治を訪ねてやって来た人に対して無責任なことだ。せめて、そういう説もかつてあったようです、ならばまだしも。
さりながら私はここでふと気付く。この『少なくとも「ヒドリ」以外は皆いわゆる標準語』という論理を軽視したような断定調のガイドの仕方も、いくつかのあやかしとも言える賢治に関する「通説」が現在も罷り通っているということも、実は似たり寄ったりな構図をしているのではなかろうかということに、だ。
例えば次のような賢治に関する次のような項目は皆そうだ。
㈠「独居自炊」とは言い切れない
㈡「大正15年12月2日の上京」の牽強付会
㈢「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」賢治
㈣ 誤認「昭和二年は非常な寒い氣候…ひどい凶作」
㈤ 昭和二年の上京と三か月のチェロ猛勉強
㈥ 賢治の稲作指導の限界
㈦「下根子桜」撤退と「陸軍大演習」
㈧ あやかし「高瀬露悪女伝説」
基本に忠実に私が検証してみれば、これらに関しては皆(つまり賢治に関して常識的におかしいというところは、殆ど皆)「通説」に問題があるからである(詳しくは、〝『「羅須地人協会時代」検証―常識でこそ見えてくる―』〟をご覧いただきたい)。
だから、このようなあやかしが殆ど再検証もなされずに、それがあたかも「真実」であるかの如くに賢治研究家の論文や論考の中にも今でも少なからず横溢していることと先の無責任なガイドの仕方とは通底していると、私はそれこそ確信を持って断定できる。ましてこのことを知ったら、石井洋二郎氏はさぞかし、ここにも「太った豚よりも痩せたソクラテス」があったのかと嘆くことしきりだろう。
つまり、なにも先のガイドの仕方だけが問題だというわけではなく、それ以上に「賢治研究」においては大きな問題があると言える。しかも、殆どの研究家がそのことを追究することは元より、言及することすら避けているかのように私からは見える。それ故に、歴史から後々厳しい裁きを受けることが避けられないのではなかろうかという懸念がこの頃はいつもつきまとう。
<*1:投稿者註> 岩手にずっと長年住んできて、「一人(ひとり)」を訛って「ヒドリ」と発音したこともなければ、そのように発音が聞こえる人に出会ったこともともに私にはない。
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◇『「羅須地人協会時代」再検証-「賢治研究」の更なる発展のために-』(定価 500円、税込み)
本書の購入をご希望なさる方がおられましたならば、葉書か電話にて下記にその旨をご連絡していただければまず本書を郵送いたします。到着後、その代金として500円(送料込)分の郵便切手をお送り下さい。
〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木 守
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なお、本書は拙ブログ『宮澤賢治の里より』あるいは『みちのくの山野草』に所収の、
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◇『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』(定価 500円、税込)
ご注文の仕方は上と同様です。
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☆『「涙ヲ流サナカッタ」賢治の悔い』 ☆『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲との共著) ★『「羅須地人協会時代」検証』(電子出版)
『羅須地人協会の真実―賢治昭和二年の上京―』、『宮澤賢治と高瀬露』のご注文につきましても上と同様ですが、こちらの場合はそれぞれ1,000円分(送料込)の郵便切手をお送り下さい。また、こちらも『宮沢賢治イーハトーブ館』において販売しております。
☆『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』 ☆『羅須地人協会の真実-賢治昭和2年の上京-』 ☆『羅須地人協会の終焉-その真実-』
ただし、『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』は在庫がございません。
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