《三輪の白い片栗(種山高原、令和3年4月27日撮影)》
白い片栗はまるで、賢治、露、そして岩田純蔵先生の三人に見えた。
そして、「曲学阿世の徒にだけはなるな」と檄を飛ばされた気がした。
白い片栗はまるで、賢治、露、そして岩田純蔵先生の三人に見えた。
そして、「曲学阿世の徒にだけはなるな」と檄を飛ばされた気がした。
米村氏はこうも言う。
では、「雨ニモマケズ」はいつから、どのように広まったのか。そのとき、何が起こったのか。こんな問いかけから初めてみよう。
最初に刊行された賢治の全集、文圃堂道第三巻「童話」篇の広告には、こんな広告が載っている。
谷川徹三によることばである。全集の広告には、編集者として、高村光太郎、宮沢清六、草野心平、横光利一の名が並ぶ。実弟である宮沢清六を除けば、当時の文壇の有力者ばかりだ。
〈『宮沢賢治を創った男たち』(米村みゆき著、青弓社)196p~〉最初に刊行された賢治の全集、文圃堂道第三巻「童話」篇の広告には、こんな広告が載っている。
これはとにかく一人の天才の本だ。僕はまだ詩を殆ど読んでゐないし、その他のことについても知らないが、この童話だけみてもさう言ひ切れる。童話はみんないい。つまらないものは一つもない。詩も僕の読んだ限りみんな独創にみちてゐる。こんな秀れた人が今まで一般に知られなかったのは不思議な気がする……。
谷川徹三によることばである。全集の広告には、編集者として、高村光太郎、宮沢清六、草野心平、横光利一の名が並ぶ。実弟である宮沢清六を除けば、当時の文壇の有力者ばかりだ。
と。なお、これと同じ内容の広告は、『宮澤賢治研究1』(草野心平編輯、宮澤賢治友の会、昭和10年4月20日発行)の、
【その見返し】
にも載っていて、米村氏も「生前は無名に近かった賢治」と言っているような賢治なのに、突如、賢治は持ち上げられ出し、一斉にあちこちで宣伝され出したことになる。それも、「当時の文壇の有力者」たちによってである。それ故にであろう、米村氏はさらにこう続ける。
この広告は、賢治の死後一年を経た時期のものだが、いくつかの点に注目したい。第一に、谷川が「詩」についてほぼ未読の状態で賢治を「天才」と読んでいること、第二に、熟読者ではない者の言説がほかならぬ全集の広告にもちいられていること、第三に、「雨ニモマケズ」を絶賛したことで有名な谷川が、賢治の「代名詞」である同詩にまったく言及しないことだ。
〈同198p〉たしかに、これらの三点は摩訶不思議なことであり、違和感を拭えない。とりわけ、今まで〝一から出直す〟シリーズを通して知ったことだが、谷川のみならず、当時、賢治の作品はあまり読まれていなかったことを痛感していたからだ。
そして、「「雨ニモマケズ」を絶賛したことで有名な谷川が、賢治の「代名詞」である同詩にまったく言及しない」と米村氏は訝っているわけだが、それは私も同じだ。ということは、谷川が昭和19年9月20日の講演で「この詩を私は、明治以来の日本人の作った凡ゆる詩の中で、最高の詩であると思っています」とべた褒めしたわけだが、「昭和10年4月20日」当時の谷川はまだそれほどまでには評価していなかったということになるのだろうか。
さらに米村氏は続けて、こうたたみかけている。
賢治や賢治作品を熟知する者はほとんどいなかった。
と。具体的には、谷川のみならず、横光利一も、吉田一穂も、市川白弦も、同様だと。当時は、いわば、「賢治を知らず」 の人達が殆どであったということになりそうだ。
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