みちのくの山野草

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露は自炊しながら鍋倉に下宿

2019-05-28 10:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
〈「白花露草」(平成28年8月24日撮影、下根子桜)

露は自炊しながら鍋倉に下宿
鈴木 さて、露が寶閑小学校勤務時代に下宿していたという「西野中の髙橋重太郎さん」宅だがそれは現「鍋倉ふれあい交流センター」の直ぐ近くにあった。
 そしてその高橋重太郎さん宅の隣家のおばあちゃん、高橋カヨ氏からは、
 寶閑小学校は街から遠いので、先生方は皆「西野中の高橋さん」のお家に下宿していました。ただしその下宿では賄いがつかなかったから縁側にコンロを出して皆さん自炊しておりましたよ。(平成24年11月4日、髙橋カヨ氏(大正14年生)から聞き取り)。
ということも教わった。
荒木 そこでお前は、なんだっけ、そうそう「べんぶ」した。
鈴木 ばれたか。そう私はもちろん抃舞したね、心の内で。だって、当時露が下宿していたなんて誰も公的には明らかにしていなかったからね。
吉田 あまり褒めたくはないが、これもまた鈴木が初めて明らかにしたんだよな。
荒木 そっかそっか、露は自炊しながら鍋倉に下宿していたのか。
 それにしても、なぜ彼等は、鈴木ごとき「馬の骨」に出し抜かれるのかね。
鈴木 まずまず。
 そんなことはさて措き、私は露が当時下宿をしていたという教え子の証言を知って、巷間言われている〈悪女伝説〉は捏造された可能性が大であるということをこの証言から直感した。例えばそれは、「昭和六年七月七日の日記」に述べられている次のことが、だ。
 彼女は彼女の勤めている学校のある村に、もはや家もかりてあり、世帶道具もととのえてその家に迎え、いますぐにも結婚生活をはじめられるように、たのしく生活を設計していた。彼女はそれほど眞劍だつた。<『宮澤賢治と三人の女性』(森荘已池著、人文書房)89pより>
吉田 さっき地図上で、

         <当時のものと思われる『花巻(五万分の一地形図)』(地理調査所)より抜粋>
露の生家から湯口村鍋倉の寶閑小学校までの距離を測ってみたならば約7㎞ものあったのだから、寶閑小学校に勤めるにあたっては当時の交通事情からして下宿等をせざるを得なかったということは納得していた。
 その上に、露のその下宿先では賄いがつかなかったとなれば、寝具等のみならずその他に自炊するための炊事用具一式も必要だったということになる。これは、重大なことがおのずから導かれるぞ。
荒木 えっ、?
鈴木 当時、賢治が下根子桜に露を出入りさせていたということは世間に知られていたようで、そのことが噂<*1>にもなっていた。そこへもってきて、一部の口さがない人たちが露のこのような下宿の仕方を知って、「もはや家もかりてあり、世帶道具もととのえてその家に迎え、いますぐにも結婚生活をはじめられるように、たのしく生活を設計していた」と面白おかしく話を作り上げ、吹聴したという図式が充分に考えられるということだよ。
吉田 そしてそれを彼は活字にしてしまったという可能性も大きい。なぜなら、森はその典拠を何ら書き添えていないからだ。またもちろん、その記述内容は検証されたものでも裏付けを取ったものでもないこともまた明らかだろう。その頃から80年以上も経った今でさえも、今回鈴木がそうしたように、ちゃんと調べればこのように下宿の仕方等がわかるのだから、森が当時調べようとすれば露が当時下宿していたこと、及びその下宿の仕方は容易にわかったはずだからだ。したがって、上田哲が言うところの「下敷」はその信憑性が実はかなり危ういという気がしてきたな。

<*1:投稿者註> それは、例えば次のような「ばけもの退治」の話がである。
 同じ菊仲間で牛乳屋をやつている八木さんと、近ごろ賢治さんの所に髪の長いばけものが出るというので、ある晩二人で退治に出かけた。
 今こそ賢治住居のあたりはきれいに整理されて、道も広く明るくなつたが、じつさい彼が住んでいた頃はあの辺は藪であつた。鍛冶屋さんと牛乳屋さんは、おつとり刀で意気込んで出だしたのはいいが、木の根につまずき、ばらにさされて、いやもう大した目にあつて彼の家の戸を叩くことができた。
 けつきよくその晩は相手のばけものがあらわれなくて、賢治さんと四方山話をして帰つて来たのであつたというが、この「髪の長いばけもの」というのが、彼の所謂『聖女のさましてちかづけるもの』T女である。

<『四次元50』(宮沢賢治友の会)11pより>
 つまり、「髪の長いばけもの」とは、下根子桜の賢治の許を訪ねる露のことだった。もちろん「T女」も露のことである。おそらくこのような噂話があれこれと流されていたのであろう。

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      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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