みちのくの山野草

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戦犯にならなかった満州事変の首謀者の一人

2018-03-09 14:00:00 | 法華経と賢治
《『イーハトーブと満州国』(宮下隆二著、PHP)の表紙》の表紙》

 では今回は〝第二章 理想郷としての満州建国〟に入る。この章ではまず、
    東京裁判で裁かれなかった満州事変の首謀者
という節に惹かれた。それは、今まで私もずっと疑問に思っていた、
    何故石原莞爾は戦犯とならなかったのだろうか?
【参照:ドイツ留学時代(1923~25)の石原莞爾】
       
      〈『石原莞爾と満州事変』(太平洋戦争研究会編著、PHP)51p〉
についての回答と言えそうな、あらまし次のようなことが述べられていたからだ。

 昭和23年年4月16日に東京裁判が結審し、同年昭和23年11月4日から判決部分の朗読が始まり、A級戦犯7名(東条英機・土肥原・板垣・木村・武藤・松井・広田)は絞死刑の判決を受け、12月26日に刑が執行された。したがって、満州事変の中心的役割を果たした板垣征四郎と土肥原賢治は入っているものの、同じような役割を果たした石原莞爾は入っていない。
 石原は、事変当時、関東軍作戦主任参謀であり、同じく高級参謀であった板垣とは盟友的な関係にあった。度量があり統率力に優れた板垣と、才気煥発だが性格が過激で独断癖がある石原とは、いいコンビであった。石原は関東軍の一参謀でありながら、板垣征四郎を担ぐことで、実質的な首謀者として満州事変を実現する。
 満州を中国から独立させるというアイデアも、そのための具体的な作戦計画を立案したのも石原であった<*1>から、彼の名前が戦犯名簿から洩れるというのは、ある意味、奇妙なことであった。
 その理由は、彼が東条英機と激しく対立していたことによるだろう。連合軍は東条をヒトラーやムソリーニとならぶ独裁者と見做していた。あるいは、そう仕立て上げようとしていた。そうすると、敵の敵は味方という論理に従えば、石原がリストから外れた理由が説明がつかないことではない。
           〈『イーハトーブと満州国』(宮下隆二著、PHP)60p〉
 ただし、「敵の敵は味方という論理」があったと言われても今一つ釈然としないところはある。しかも、当の本人は自らを「戦犯に指定しろ」と直談判したと宮下氏はそこで述べていたからなおさらにだが……。いずれにせよ、石原は戦犯にはならなかった。そして一方の板垣はA級戦犯として処刑された。流石に石原も忸怩たる想いがあったであろう。

<*1:投稿者註> 福井雄三氏によれば、
 満州事変といえば、ただちに石原莞爾を連想される方が多いだろう。たしかにこの二つは表裏一体・不可分として論じられることが多い。だが満州事変とそれに引き続く満州建国は、板垣征四郎と石原莞爾の合作によるものである。板垣は満州事変当時、石原の上官で関東軍最高級参謀であった。頭脳の石原、実行の板垣と称されたように、この二人の名コンビは車の両輪のように助け合い、相乗作用をしながら満州事変を推進した。この二人のうちのいずれの一方が欠けていても、満州国建国はあり得なかった。
            〈『板垣征四郎と石原莞爾』(福井雄三著、PHP)1p〉
ということであり、客観的には板垣と石原の責任は同等だと言えそうだ。
 なお、PHPはこのような出版物が多いということに、今になってやっと私は気付いた。ちなみに、それは上掲書以外に、『イーハトーブと満州国』(宮下隆二著)、『石原莞爾と満州事変』(太平洋戦争研究会)がPHPの出版だったということを私は知ったからだ。

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