《創られた賢治から愛すべき賢治に》
立野信之の『黒い花』よりさて、注文していた立野信之の小説『黒い花』(上、續)が届いた。この本の本文中のどこかに「黒い花」という言葉がきっと何度か登場するであろう、そうすればいままでのもやもやが一気に解消するぞと思って期待しながらざっと読み通してみた。
ところが何と、本文中のどこにも「黒い花」にという言葉は登場してこない
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せいぜい、「黒」という活字が次のように
◇『黒い花(上)』(立野信之著、ぺりかん社)
129p 黒いトルコ帽をかぶり←トルコ帽については大本教の信者などもかぶっていた
208p 白でなければ黒←たぶんこれは反共か無政府主義かを当て擦ったもの
237p 黒旗をふりかざし←アナーキストが掲げるところの黒旗をふりかざしの意?
◇『黒い花(續)』(立野信之著、新潮社)
8p くろがねの窓←監獄の鉄格子の窓の意?
42p 黒いソフトをあみだにかぶり、黒い長マントを着←特にこの「黒」に意味なし
62p 黒海での叛乱←特にこの「黒」に意味なし
84p マロニエの黒い幹や…道往く人々も、みな黒装束で←特にこの「黒」に意味なし
117p 黒々と陽に焼けて、…鼻下には黒々と口髭←特にこの「黒」に意味なし
141p 黒焦げになり←特にこの「黒」に意味なし
193p 黒地に赤の組合旗…物見高い人々が黒山を築き←黒地に赤の旗だからアナーキズムの旗の一種だろう
204p 黒っぽい、あまり上等でない外套←特にこの「黒」に意味なし
登場してるだけだったし、これらからだけでは一般の人は「黒い花」の意味するところはまず読み取れないだろう。129p 黒いトルコ帽をかぶり←トルコ帽については大本教の信者などもかぶっていた
208p 白でなければ黒←たぶんこれは反共か無政府主義かを当て擦ったもの
237p 黒旗をふりかざし←アナーキストが掲げるところの黒旗をふりかざしの意?
◇『黒い花(續)』(立野信之著、新潮社)
8p くろがねの窓←監獄の鉄格子の窓の意?
42p 黒いソフトをあみだにかぶり、黒い長マントを着←特にこの「黒」に意味なし
62p 黒海での叛乱←特にこの「黒」に意味なし
84p マロニエの黒い幹や…道往く人々も、みな黒装束で←特にこの「黒」に意味なし
117p 黒々と陽に焼けて、…鼻下には黒々と口髭←特にこの「黒」に意味なし
141p 黒焦げになり←特にこの「黒」に意味なし
193p 黒地に赤の組合旗…物見高い人々が黒山を築き←黒地に赤の旗だからアナーキズムの旗の一種だろう
204p 黒っぽい、あまり上等でない外套←特にこの「黒」に意味なし
したがって、なんとこの小説では、
「黒い花」という用語が本文中のどこにも一切登場しない、タイトルが『黒い花』という小説
であるという、奇妙な現象が起こっている。
するとこのことから逆に言えることは、
「黒い花」とはわかる人には説明なしでもわかる用語である。
ということ、いわゆる「隠語」であるということであろう。そしてなおかつ、『黒い花』(立野信之著、ぺりかん社)の函の表側には
アナーキスト・大杉栄をめぐる一大ロマンの復活
というキャッチコピーが、同裏側には
花は咲かなければならない、たとえばそれが花咲くことは死を意味するものであろうとも。
J.M.ギュイヨウ
というフレーズが印刷されているからには、そもそも「黒い花」とは、まずはアナーキズムに密接に関連することを指すことはほぼ間違いなさそうだから、著者の立野信之はJ.M.ギュイヨウ
「黒い花」とは、アナーキズムにおける華々しいことであり、そのことを達成するためには死をもいとわないものである。……①
ということを実は私たちに教えている、ということが導かれそうだ。さて、それでは一体「黒い花」はズバリ何を意味しているのだろうかと、ますます想像を逞しくて推理したくなってきた。
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なお、その一部につきましてはそれぞれ以下のとおりです。
「目次」
「第一章 改竄された『宮澤賢治物語』(6p~11p)」
「おわり」
クリックすれば見られます。
アナーキズムとの関係を取り上げられ、興味深く拝読しています。
「虚無思想研究』など、賢治とアナーキズムは深い関係ですね。国柱会―アナーキズム―労農派の関連で賢治の思想を探る必要を感じています。
宜しく。
今年の賢治祭、花巻に出かけるつもりです。
お早うございます。いつも大変お世話になっております。
花巻はようやく夏らしさが少しだけ感じられるようになってまいりましたが、未だ梅雨明け宣言はなされず、山行も控えておりますが、至って元気に過ごしております。TV等によれば御地も思いの外気温も上がらず、夏らしからぬこの頃の気候のようですが、大内先生におかれましてはお変わりございませんか。
さて、アナーキズムのことは浅学ゆえよくわかっていないのですが、もしかすると賢治は少なくとも心情的にはかなりアナーキストではなかろうかとこの頃は思っております。
さもなければ、過激すぎる詩〔一〇五六 サキノハカといふ黒い花といっしょに〕を詠む訳がないと思えるからです。
しかも、立野信之すら小説『黒い花』を書きながらも用語「黒い花」の説明は一切その作品中ではしておらず、そのヒントさえも顕わには示しておりません。
おそらく「黒い花」とはアナーキストやアナーキズムにシンパシーを持っている人には自明のことだが、それを公言することは憚られるものだと思っております。
そのあたり、もう少し想像を逞しくしてあと少し投稿してみたいと思っておりますので、どうぞご指導・ご助言をお願いいたします。
鈴木 守