みちのくの山野草

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1 千葉恭は松田甚次郎を直に見た

2024-01-25 12:00:00 | 賢治と一緒に暮らした男



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********************************** なお、以下は今回投稿分のテキスト形式版である。**************************
第3章 千葉恭の下根子桜寄寓期間
 さて、千葉恭のあの「日」及び「期間」は今だもって確定出来ないでいる。いくつかのアプローチを試み、その結果いくつかの点が明らかになったとはいっても肝心のこのことには殆ど近付けないでいる。

1 千葉恭は松田甚次郎を直に見た
 残念ながらこの時点でこの「日」及び「期間」に関してほぼ確かなことは、大正15年7月25日前後千葉恭は下根子桜の宮澤家別宅に寄寓していた、ということだけである。
 そこでもう一度千葉恭に関連して、その時点までに入手出来た資料(以前列挙した【千葉恭関連文献】のリストの全て)を読み直してみた。すると次のような事柄が書かれている2つの資料が目に留まった。その一つは 「宮澤先生を追つて(三)」であり、その中には次のようなことが書かれていた。
 詩人と云ふので思ひ出しましたが、山形の松田さんを私がとうとう知らずじまひでした。その后有名になつてから「あの時來た優しさうな靑年が松田さんであつたのかしら」と、思ひ出されるものがありました。
<『四次元7号』(宮澤賢治友の会)>
 そして二つ目は 「羅須地人協会時代の賢治」であり、こちらには次のようなことが述べられている。
 一旦弟子入りしたということになると賢治はほんとうに指導という立場であつた。鍛冶屋の気持ちで指導を受けました。これは自分の考えや気持ちを社会の人々に植え付けていきたい、世の中を良くしていきたいと考えていたからと思われます。そんな関係から自分も徹底的にいじめられた。
 松田甚次郎も大きな声でどやされたものであつた。
<『イーハトーヴォ復刊2号』(宮澤賢治の会)>
 これらはいずれも松田甚次郎に関わるものであり、この最後の賢治から〝松田甚次郎も大きな声でどやされた〟とくれば昭和2年3月8日の訪問(後述する)のあのシーンが想起される。これでちょっとだけだが再び明かりがほのかに見えてきた。というのはこれらの資料から
〝千葉恭は下根子桜の宮澤家別宅寄寓中に賢治を訪れた松田甚次郎本人を直に見ている。〟
ということが言えそうだからだ。こうなれば、松田甚次郎が大正15年4月~昭和2年3月の間(盛岡高等農林在学期間)のいつ頃何回ほど下根子桜に賢治を訪ねたかが判ればあの「日」及び「期間」をある程度推測出来そうな気がしてきた。
******************************************************* 以上 *********************************************************
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 ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているという。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。
 おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
 一方で、私は自分の研究結果には多少自信がないわけでもない。それは、石井洋二郎氏が鳴らす、
 あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること
という警鐘、つまり研究の基本を常に心掛けているつもりだからである。そしてまたそれは自恃ともなっている。
 そして実際、従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと言われそうな私の研究結果について、入沢康夫氏や大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、なおさらにである。

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 そのようなことも訴えたいと願って著したのが『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))

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            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守  ☎ 0198-24-9813
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