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〈ハヤチネウスユキソウ〉(平成19年7月11日、早池峰山)
****************************************「宮澤賢治伝」の検証 ― 宮澤賢治と〈悪女〉にされた高瀬露―****************************************
この論文は、昨年(2019年)末に『賢治学会』に正式に提出したものだが、「以前に同じようなものを書いているから」というような理由で門前払い(?)をされたものである(なお、私はそのような論文は以前に書いてなどいない)。*****************************************************************************************************************************
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******************************************************以下テキストタイプ******************************************************
型研究」という、オーソドックスなはずの研究手法に依って〈悪女・高瀬露〉を再検証をしてきた。
その結果、〈高瀬露悪女伝説〉は単なる虚構であり、〈高瀬露は悪女とは言えない〉がその「真実」だということを検証できた。
よって、上田の遺志によって命じられたと私自身は認識している課題の半分には、ある程度応えることができたものと安堵している。ただし、まだ半分が残っている。
というのは、露は〈悪女〉の濡れ衣を着せ続けられてきたということが少なくとも否定できないことがこれで明らかになったので、〈悪女・高瀬露〉はもはや人権問題となってしまった。しかも、〈高瀬露悪女伝説〉は全国に流布しているから、当然これをこの世から葬り去り、貶められた高瀬露の人格や傷つけられた尊厳を回復せねばならない(少なくとも、いわば「推定無罪」の原則が適用されねばならないはずだからだ)、という残り半分の課題がである。
そしてそれは、露一人のためだけでなく賢治のためにも、である。というのは、生前賢治が、血縁以外の女性の中で一番世話になったのが露だ。ところが、その露がとんでもない〈悪女〉にされているという実態があるので、このままでは、賢治はいわば「恩を仇で返した」ということになり、「歴史」から誹られる虞があるからだ。
とはいえ、残念ながら個人的な取り組みではこの課題の解決は殆どどうにもならない。がしかし、かなり確実に解決できる方途があることに気付く。それは、賢治学会が〈高瀬露悪女伝説〉を再検証してみたところ、露は悪女とは言えないということであったならば、そのことを公的に宣言することによってである。同時に、もしそうなったとすれば、賢治が誹られる虞もなくなる。そしてもちろん、露の濡れ衣は一気に晴れるし、露の名誉と尊厳もかなり取り戻せる。
畢竟するに、時代は変わってしまったのだ。昔ならいざ知らず、今の時代は人権が何にもまして優先される時代だから、もはや人権問題となってしまった〈悪女・高瀬露〉の解決は喫緊の重要課題である。となれば、私たちがこのことを見て見ぬ振りし続けることを、時代はもう許さないのではなかろうか。
〈注〉
(一) 佐藤隆房『宮澤賢治』(冨山房、一九四二年、一七五頁)
(二) 『新校本 宮澤賢治全集第六巻詩Ⅴ校異篇』(筑摩書房、一九九六年、二二五頁)
(三) 森荘已池『宮沢賢治の肖像』(津軽書房、一九七四年、二三六頁)
(四) 雜賀信行『宮沢賢治とクリスチャン 花巻編』(雜賀編集工房、二〇一五年、一四三~一四七頁)
(五) 山下聖美『賢治文学「呪い」の構造』(三修社、二〇〇七年、五九頁)
(六) 澤村修治『宮澤賢治と幻の恋人 澤田キヌを追って』(河出書房新社、二〇一〇年、一四五頁)
(七) 『七尾論叢第一一号』(七尾短期大学、一九九六年、八九頁)
(八) 森荘已池『宮澤賢治と三人の女性』(人文書房、一九四九年、八九頁)
(九) 二〇一二年年一一月四日高橋カヨ(一九二五生)からの聴き取り。
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《新刊案内》
『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』(「露草協会」、ツーワンライフ出版、価格(本体価格1,000円+税))
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また、2020年12月6日)付『岩手日報』にて、『宮沢賢治と高瀬露―露は〈聖女〉だった―』の「新刊寸評」。
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