みちのくの山野草

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満州事変と国柱会

2018-03-10 14:00:00 | 法華経と賢治
《『イーハトーブと満州国』(宮下隆二著、PHP)の表紙》の表紙》

 ではここからは、石原と、法華経及び国柱会の関係についてである。まず宮下氏は、
 石原は幼年時代から霊感が強く、かつ神仏に関心が深かった。陸軍幼年学校時代(一七歳)に日蓮の烈々たる気迫や数々の予言、法難の話を聞いて大いに感動し、熱心に日蓮の研究をし、かつ学友にもこれを勧めたという。
            〈『イーハトーブと満州国』(宮下隆二著、PHP)69p〉
と教えてくれる。たしかに、賢治と似ているところが少なからずある。賢治も霊感が強かったっといわれている<*1>ようだし、石原と同様に、賢治も学友にも勧めていた<*2>というからだ。
 そして、
 石原は陸軍大学校を卒業し、教育総監部に勤務していた。陸大出のエリート将校としての第一歩を、ようやく切り始めたところである。…(投稿者略)…
 そのよううな当時として最高のレベルの知識と教養を身につけていた男が、田中智学の教えのどこに惹きつけられたのか。その答は…(投稿者略)…石原自身が『戦争史大観』の中で、「日蓮聖人の国体観が私を心から満足せしめた結果」であると述べている。
 厳密に言うならば、これは日蓮の国体観というよりは、田中智学の国体観であろう。
            〈69p〉
とも宮下氏は述べている。ただしこの段階では私には今一つ解りにくかったのだが、引き続く同氏の次のような解説によって少し理解が増した。
 石原は、天皇に忠誠を尽くす義務のある帝国軍人である。その精神については幼年学校時代から、骨の髄まで叩き込まれている。軍人としての石原は、国体の護持こそ唯一無二の価値観とせねばならない。
 であるならば、日蓮の法華経至上主義的生き方とは、食い違いが生じるはずであった。それを解決したのが、「田中智学の国体観」だったのである。
            〈70p〉

 では、その「田中智学の国体観」とは、どのようなものだったのだろうか。それは以前〝「八紘一宇」と疲弊した社会〟にて引いてみたことだが次のようなものであり、
 簡単に言えば、天皇制と日蓮信仰の融合である。日本は神国であり天皇のしろしめす国である。一方、日蓮は、日本は法華経を流布すべく特別な使命を持っていると言っており、法華経の全世界伝道を通じて、天皇が世界の盟主となるのだ、ということである。…(投稿者略)…
 田中智学は、その著『宗門の維新』において「(日蓮)は世界統一の大元帥なり。大日本帝国はまさしくその大本営なり。日本国民はその天兵なり」と激しい思想を展開している。このような点が敬遠されて、戦後の智学はまともに論じてこられなかった。
            〈70p~〉
しかもそれが因となって、戦後智学のことはまともに論じられることがなくなったということも教えてくれる。逆の見方をすれば、理崎氏が
と指摘するところとなるのだろう。

<*1:投稿者註> 例えば、『解離性障害』(柴山雅俊著、ちくま新書)の「第7章 解離と心――宮沢賢治の体験世界」には、
 解離は賢治の作品の体験世界を読み解くのに新たな視点を提供するだろう。
 解離を思い切って大きく捉えるならば、それは原始心性や夢体験などの原初の意識と連続的につながっているだろう。
 賢治作品には、体外離脱体験、疎隔・離人症状、表象幻視、幻視などの多くの解離の症候を読みとることができる。
ということが述べられていて、著者の柴山氏は精神科医だから、なるほどなと思わせられる。
<*2:投稿者註> 例えば、大正10年3月10日付宮本友一宛書簡(191の1)中の
 別冊勅教玄義に研究案内がありますからその順序におよりなさったらいゝかと思ひます 差し当り一番緊要なのは天業民報でせう
等がその一例となろう。

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