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〈『山荘の高村光太郎』》(佐藤勝治著、現代社)
では今回は、
雨ニモマケズの碑(146p~)
という項からである。そこにはこんなことが述べられていた。
ある時私が先生に、桜の詩碑はどうして詩の後半だけを、それも原文とは少し変えて彫り込んだのでしょうかとおききしました。
先生は例のぎょっとした表情をなさいました。
「あれは違うんですか」
全く意外だというように答えられました。
「僕は花巻の宮沢さんから送ってきた通りを書いたですよ。
僕もしのはんぶんだけではおかしい思って、その事は聞いてみたのですが、あまり長いから前半を略したというので、そのまま書いたのです。
どこが違うんですか」
そこで私は、原文を口誦しながら、碑との違いを説明しました。先生は全く初耳だ。それはどうにかしなければならないと言われます。
「大体詩をなおすなどということはけしからぬ事です。何かのまちがいだろう」
先生は憤然となさいました。
「花巻に行ってきいてみましょう」
先生はこの事のためにわざわざ花巻へ出かけられたと思います。
あの、省いた「松ノ」と「ソノ」という文字はあまりたびたび重なるので、宮沢清六氏の提案で、原文から取ることを関係者たちが決め、それを先生に送ったのだそうであります。
先生は何も知らずに、送られてきた原稿を忠実に書かれたのであります。
先生は例のぎょっとした表情をなさいました。
「あれは違うんですか」
全く意外だというように答えられました。
「僕は花巻の宮沢さんから送ってきた通りを書いたですよ。
僕もしのはんぶんだけではおかしい思って、その事は聞いてみたのですが、あまり長いから前半を略したというので、そのまま書いたのです。
どこが違うんですか」
そこで私は、原文を口誦しながら、碑との違いを説明しました。先生は全く初耳だ。それはどうにかしなければならないと言われます。
「大体詩をなおすなどということはけしからぬ事です。何かのまちがいだろう」
先生は憤然となさいました。
「花巻に行ってきいてみましょう」
先生はこの事のためにわざわざ花巻へ出かけられたと思います。
あの、省いた「松ノ」と「ソノ」という文字はあまりたびたび重なるので、宮沢清六氏の提案で、原文から取ることを関係者たちが決め、それを先生に送ったのだそうであります。
先生は何も知らずに、送られてきた原稿を忠実に書かれたのであります。
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〈『雨ニモマケズ詩碑の由来』(高村記念会)より〉
私はこの記述を読みながら、改めてY氏のあの発言は酷いと思うとともに、情けないと思った。というのはこの件に関して私は、
〝1853 高村光太郎の名誉のために〟
〝「写しの詩句を躊躇なく、字配りもそのまま揮毫」〟
という投稿を以前したのだが、その際に知った次のY氏の、
という発言がだ。Y氏は、「ヒドリ」を「ヒデリ」に改竄したのは光太郎であった、と決めつけているわけで、まさにY氏こそが「地元の事情が全然わかっていなかった」と私は言わざるを得ない。
言い換えれば、Y氏は
〝光太郎の証言等を本気で探したのだろうか〟
ということでもある。たとえば、賢治詩碑が建立されたのは昭和11年11月21日だが、それ以前の昭和9年9月21日(賢治の命日)付け『岩手日報』学芸欄に「ヒドリ」の部分が「ヒデリ」と書き直された「遺作」(いわゆる「雨ニモマケズ」)が載っているので、少しく調べれば容易にその「決めつけ」方はかなり危ういということに気づけるからだ。
はてさて、「とにかく光太郎はヒデリと直したわけでしょう。ヒドリの言葉を削ってね。結局、光太郎がやったことですね」という発言は、著名な宗教学者としては如何なものか。
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☆『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/20/a2fa88a84d3910d7fdeeca669a068dd1.png)
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〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守 ☎ 0198-24-9813
《新刊案内》
この度、拙著『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』
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を出版した。その最大の切っ掛けは、今から約半世紀以上も前に私の恩師でもあり、賢治の甥(妹シゲの長男)である岩田純蔵教授が目の前で、
賢治はあまりにも聖人・君子化され過ぎてしまって、実は私はいろいろなことを知っているのだが、そのようなことはおいそれとは喋れなくなってしまった。
と嘆いたことである。そして、私は定年後ここまでの16年間ほどそのことに関して追究してきた結果、それに対する私なりの答が出た。延いては、
小学校の国語教科書で、嘘かも知れない賢治終焉前日の面談をあたかも事実であるかの如くに教えている現実が今でもあるが、純真な子どもたちを騙している虞れのあるこのようなことをこのまま続けていていいのですか。もう止めていただきたい。
という課題があることを知ったので、 『校本宮澤賢治全集』には幾つかの杜撰な点があるから、とりわけ未来の子どもたちのために検証をし直し、どうかそれらの解消をしていただきたい。
と世に訴えたいという想いがふつふつと沸き起こってきたことが、今回の拙著出版の最大の理由である。しかしながら、数多おられる才気煥発・博覧強記の宮澤賢治研究者の方々の論考等を何度も目にしてきているので、非才な私にはなおさらにその追究は無謀なことだから諦めようかなという考えが何度か過った。……のだが、方法論としては次のようなことを心掛ければ非才な私でもなんとかなりそうだと直感した。
まず、周知のようにデカルトは『方法序説』の中で、
きわめてゆっくりと歩む人でも、つねにまっすぐな道をたどるなら、走りながらも道をそれてしまう人よりも、はるかに前進することができる。
と述べていることを私は思い出した。同時に、石井洋二郎氏が、 あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること
という、研究における方法論を教えてくれていることもである。すると、この基本を心掛けて取り組めばなんとかなるだろうという根拠のない自信が生まれ、歩き出すことにした。
そして歩いていると、ある著名な賢治研究者が私(鈴木守)の研究に関して、私の性格がおかしい(偏屈という意味?)から、その研究結果を受け容れがたいと言っているということを知った。まあ、人間的に至らない点が多々あるはずの私だからおかしいかも知れないが、研究内容やその結果と私の性格とは関係がないはずである。おかしいと仰るのであれば、そもそも、私の研究は基本的には「仮説検証型」研究ですから、たったこれだけで十分です。私の検証結果に対してこのような反例があると、たった一つの反例を突きつけていただけば、私は素直に引き下がります。間違っていましたと。
そうして粘り強く歩き続けていたならば、私にも自分なりの賢治研究が出来た。しかも、それらは従前の定説や通説に鑑みれば、荒唐無稽だと嗤われそうなものが多かったのだが、そのような私の研究結果について、入沢康夫氏や大内秀明氏そして森義真氏からの支持もあるので、私はその研究結果に対して自信を増している。ちなみに、私が検証出来た仮説に対して、現時点で反例を突きつけて下さった方はまだ誰一人いない。
そこで、私が今までに辿り着けた事柄を述べたのが、この拙著『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))であり、その目次は下掲のとおりである。
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