みちのくの山野草

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不自然な「一九二八年」の表記

2019-06-05 10:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
〈「白花露草」(平成28年8月24日撮影、下根子桜)

不自然な「一九二八年」の表記
吉田 さて、これで「昭和2年の秋の日」の森荘已池の下根子桜訪問は実はかなり困難だったということは明らかになったのだが、そろそろ駄目を押してみようか。
荒木 えっ、この件でさらにまた検証を続ける気か。
吉田 露の冤罪を晴らすためだ、これだけは付き合え。
荒木 しょうがねえな。これで最後にしてくれよな。それで?
吉田 それは、『宮澤賢治と三人の女性』の中で、西暦と和暦がどう使い分けられているかを調べてみることだ。
鈴木 うん?どういうことだ。
荒木 論より証拠。じゃやってみるべ。
鈴木 それじゃ、まずは「Ⅰ 挽歌を中心に」においてはこうだ。
 24p :大正六、七年頃
 〃 :昭和十八年十月
 〃 :大正十二年
 27p :明治三十一年十一月五日
 33p :明治四十五年一月
 34p :大正二年
 36p :大正四年四月
 37p :大正七年十一月
 〃 :大正七年十二月二十七日
 42p :昭和十四年十一月二十三日
 52p :大正八年二月三日
 〃 :大正七年
 53p :大正九年九月二十九日
 〃 :大正十年七月
 〃 :明治十五年八月
 〃 :昭和二十三年
 54p :大正十一年
 61p :大正十年の九月
 63p :昭和十四年
荒木 なんだ、西暦は全然出て来ないじゃないか。じゃあ、次の「Ⅱ 昭和六年七月七日の日記」については俺がチェックしてみよう。
 71p :昭和六年七月七日
 72p :大正十五年
 74p :一九二八年の秋の日、私は下根子を訪ねた……
 77p :大正十五年
 93p :昭和三年
 〃 :昭和三年八月
 96p :昭和六年
 104p:昭和六年七月七日
となっていた。やっとここで西暦が一個出て来たか。
吉田 ならば、最後の「Ⅲ『三原三部』の人」については僕だ。
 114p:昭和十五年十二月十五日
 〃 :昭和十六年
 144p:昭和十五年の十一月
 〃 :昭和八年
 〃 :昭和三年六月十三日
 146p:昭和三年
 153p:昭和三年六月十五日
 156p:昭和十六年一月二十九日
 159p:(昭和)十六年二月十七日
 180p:昭和二十一年
となっている。西暦はここでも全く出たこないんだな。
荒木 ……なるほど、そういうことか。
    西暦表記は一個所しかなく、それはなんと例の「一九二八年」の個所だけだった。
のか。
鈴木 しかも、同じ年のことなのに他の個所では和暦の「昭和三年」を使っているというのに、だぞ。
荒木 ありがとう、吉田。これでばっちり駄目押しができた。この不自然な「一九二八年」の表記が雄弁に物語ってくれていることが俺には完全に透けて見えた。
鈴木 そうか、このぎこちない西暦の使い方が、その裏には著者の意図的な操作があったのだということをはしなくも教えてくれているということか。
荒木 それにしても吉田は鋭い、良くそんなところに気付いたな。
吉田 じゃじゃ、荒木からそう言われると、照れるな。

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      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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