みちのくの山野草

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賢治は〈遊民〉だった?

2020-02-15 10:00:00 | 賢治渉猟
《『批評空間 Ⅱ 14』(太田出版)の表紙》

 続けて吉田司氏はこう語っていた。
 それから〈質屋神話〉が崩れると、当然賢治が〈商業〉を嫌悪し〈農民〉救済に走ったという賢治伝説もガタガタになるわけで、彼はどうも商人も農民もどっちも信用していなかった。
             〈『批評空間 Ⅱ 14』(太田出版)8p〉
 たしかに賢治に関する神話が崩れ出すと、それは他にも波及するということは私も実際に経験した。例えば私の場合、「羅須地人協会時代」が「独居自炊」とは言い切れないということを実証できた、つまり同時代の賢治は千葉恭とある一定期間一緒に暮らしていたということを知ってしまったならば、それは「パンドラの箱」を開けてしまったことになった<*1>からだ。
 また、ここ十数年をかけて主に「羅須地人協会時代」の賢治を検証し続けてきた結果、少なくとも「賢治は農民を信用していなかった」ということは否定できないということも知った<*2>。

 そして吉田氏はさらに、
 で、商人でも農民でもないとしたら彼は一体何者なんだ? ということになり、そこで石川啄木の『時代閉塞』の〈遊民〉という概念にぶつかるんですね。要するに、遊民=遊び人だと。
             〈同〉
というように断定していた、賢治は基本的には〈遊民〉だったと。このことについては、私も最近次第にそう思ってきたところだったし、先頃、NHKEテレの番組〝先人たちの底力 知恵泉「宮沢賢治 ”好き”こそ苦しみと生きる道」〟で斉藤環氏が、
    賢治はニートであり、パラサイトだ。
と堂々と言っていたことも知って、引きこもりの専門家の同氏がこう断定しているのだからなおさらに、
   賢治は基本的には〈遊民〉だった。
と断定せざるを得ないのかなと私は覚悟しつつある。

<*1:投稿者註> 開けてしまった「パンドラの箱」については、具体的には、拙著『本統の賢治と本当の露』(ツーワンライフ出版)の「第一章 本統の宮澤賢治 」の、
2.「賢治神話」検証七点
 ㈠ 「独居自炊」とは言い切れない
 ㈡ 「羅須地人協会時代」の上京について
 ㈢ 「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」賢治
 ㈣ 誤認「昭和二年は非常な寒い氣候…ひどい凶作」
 ㈤ 賢治の稲作指導法の限界と実態
 ㈥ 「下根子桜」撤退と「陸軍大演習」
 ㈦ 「聖女のさまして近づけるもの」は露に非ず
等をご覧頂きたい。
<*2:投稿者註> 例えば、川村尚三は次のようなことを証言しているからである。
 夏頃、こいと言うので桜に行ったら玉菜の手入をしていた、昼食時だったので中に入ったら私にゴマせんべいをだした。…投稿者略…農民は底に叛逆思想をもっていて救いがたいがとにかく一番困ることに手助けしてやらねば……というようなことをいったのも記憶している。(花巻市宮野目本館、川村尚三談、一九六七・八・一八)
                 <『岩手史学研究 NNO.50』(岩手史学会)220p~より>
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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』
 本書は、「仮説検証型研究」という手法によって、「羅須地人協会時代」を中心にして、この約10年間をかけて研究し続けてきたことをまとめたものである。そして本書出版の主な狙いは次の二つである。
 1 創られた賢治ではなくて本統(本当)の賢治を、もうそろそろ私たちの手に取り戻すこと。
 例えば、賢治は「ヒデリノトキニ涙ヲ流サナカッタ」し「寒サノ夏ニオロオロ歩ケナカッタ」ことを実証できた。だからこそ、賢治はそのようなことを悔い、「サウイフモノニワタシハナリタイ」と手帳に書いたのだと言える。
2 高瀬露に着せられた濡れ衣を少しでも晴らすこと。
 賢治がいろいろと助けてもらった女性・高瀬露が、客観的な根拠もなしに〈悪女〉の濡れ衣を着せられているということを実証できた。そこで、その理不尽な実態を読者に知ってもらうこと(賢治もまたそれをひたすら願っているはずだ)によって露の濡れ衣を晴らし、尊厳を回復したい。
〈目次〉

〈はじめに〉




 ………………………(省略)………………………………

〈おわりに〉





〈資料一〉 「羅須地人協会時代」の花巻の天候(稲作期間)   143
〈資料二〉 賢治に関連して新たにわかったこと   146
〈資料三〉 あまり世に知られていない証言等   152
《註》   159
《参考図書等》   168
《さくいん》   175

 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,650円(本体価格1,500円+税150円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813
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