みちのくの山野草

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ちゑと賢治の見合いが昭和2年10月?の意味

2019-02-19 12:00:00 | 濡れ衣を着せられた高瀬露
《『宮澤賢治と高瀬露』(上田哲・鈴木守共著、友藍書房)の表紙》

 その後、私は賢治研究家B氏から、
 「伊藤七雄・ちゑが花巻を訪れた時期は昭和2年の10月であった」、と宮澤清六が直接B氏に証言した。
ということを教えてもらった(平成27年9月20日、花巻F館にて)ので、これと先のちゑの藤原嘉藤治宛書簡<*1>の記述とを併せて考えれば、
    伊藤兄妹が賢治との見合いのために花巻を訪れたのは昭和2年10月であった。
とほぼ断定できるだろう。そしてそれは奇しくも、
(賢治先生から)昭和二年の夏まで色々お教えをいただきました。その後は、先生のお仕事の妨げになっては、と遠慮するようにしました。……①
            <『七尾論叢 第11号』(七尾短期大学)81p >
と高瀬露が遠野時代の同僚に証言しているが、その「下根子桜」訪問を遠慮し出した直後のことであったということになる。
 したがって、この見合いの時期がほぼ確定したということはとても重要な意味合いを持つ。それは蓋然性の高いあることに気付かせてくれたからだ。

 さて、先に私は拙論「聖女の如き高瀬露」を上田哲との共著『宮澤賢治と高瀬露』において公にしたのだが、賢治研究家M氏から過日、
   露はどうして〈悪女〉にされたのでしょうね。
と問われた。
 たしかに、この拙論で検証したみたところでは、露が〈悪女〉であるという客観的な根拠は何一つ見つからないから彼女は巷間言われているような悪女では決してなく、それどころかどちらかといえば聖女の如き人だったということを同拙論で実証できたものの、現実には巷間そうされていているわけだからその「理由」は必ずあるはずだ。しかし私はそれは見出せていなかったので、その問いに対して、
   その点に関してはわかりませんでした。
とお答えするしかなかった。
 実際、この点に関しては誰一人として公には言及していないはずだ。そして実は私もそこに踏み入るつもりはそれまではあまりなかった。露が巷間言われているような〈悪女〉でないということは、ある程度賢治と露のことを識ってしまえば常識的に明らかなことだったからそれを仮説として、その検証をし、できれば実証したいという一心だったからだ。
 しかしそれをやり遂げた今、その「理由」を賢治研究家から問われて無責任だったかなと反省してみた。少なくとも拙論「聖女の如き高瀬露」を公にした以上は、その点に関しての私見を一つぐらいは持っておくべきかなと考え直して、あれこれ考えてみた。
 そんな時にたまたま教えてもらったのが上述の清六の証言だが、そのことを知ってあることに気付かせてもらった。それは、先に引用〝①〟の意味する、
   露が「下根子桜」に賢治を訪ねていたのは昭和2年の夏までであった。
と、
    伊藤ちゑが賢治との見合いのために花巻を訪れたのはほぼ昭和2年10月であると言える。
ということの時間的な推移から示唆されることである。

<*1:註> 次の藤原嘉藤治宛ちゑ書簡のことである。
 しかもそれだけではなく、未だあまり広く世に知られてはいないのだが、同時代の「ある年」の10月29日付藤原嘉藤治宛ちゑ書簡〈註十一〉中にも、

 又、御願ひで御座居ます この御本の後に御附けになりました年表の昭和三年六月十三日の條り 大島に私をお訪ね下さいましたやうに出て居りますが宮澤さんはあのやうにいんぎんで嘘の無い方であられましたから 私共兄妹が秋〈註十二〉花巻の御宅にお訪ねした時の御約束を御上京のみぎりお果たし遊ばしたと見るのが妥当で 従って誠におそれ入りますけれど あの御本を今後若し再版なさいますやうな場合は何とか伊藤七雄を御訪ね下さいました事に御書き代へ頂きたく ふしてお願ひ申し上げます

というように、ちゑは嘉藤治に対しても似た様な懇願をしていた。
 したがってこれらのことからは、ちゑは賢治と結びつけられることを頑なに拒絶していたということが否定できない。賢治が結婚したかったちゑと云われているというのに何故だったのだろうか。常識的に考えてかなりおかしなことだ。
             〈『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版)95p~〉

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 賢治の甥の教え子である著者が、本当の宮澤賢治を私たちの手に取り戻したいと願って、賢治の真実を明らかにした『本統の賢治と本当の露』

             〈平成30年6月28日付『岩手日報』一面〉
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 その約一ヶ月後に、著者の実名「鈴木守」が使われている、個人攻撃ともとれそうな内容の「賢治学会代表理事名の文書」が全学会員に送付されました
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 現在、岩手県内の書店での店頭販売やアマゾン等でネット販売がなされおりますのでどうぞお買い求め下さい。
 あるいは、葉書か電話にて、『本統の賢治と本当の露』を入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金分として1,620円(本体価格1,500円+税120円、送料無料)分の郵便切手をお送り下さい。
      〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守
               電話 0198-24-9813

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