みちのくの山野草

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本日の下根子桜(11/11、取り返しの付かないこと)20

2021-11-11 18:00:00 | 「賢治年譜」等に異議あり
 「252c等の公開」は、賢治に対しても取り返しの付かないことをしてしまった。

 さて、『校本宮澤賢治全集第十四巻』は〝「新発見の252c」等の公開〟をし、しかも「「困難」なはずのものにも拘わらず」延々と推定を繰り返した推定群⑴~⑺を同巻で公にした。すると時を同じくして、それまでは一部にしか知られていなかった、賢治にまつわる〈悪女伝説〉が〈高瀬露悪女伝説〉に変身して、一瀉千里に全国に流布してしまった。高瀬露が〈悪女〉であることの客観的な根拠は存在しないというのにである。よって、これは濡れ衣であるということになり、同巻がそれを全国に流布させてしまったと世間から言われかねない。
 のみならず、〝「新発見の252c」等の公開〟によって、あろうことか同巻は賢治のプライバシー権を侵害してしまったと言える。そのことを私は『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』中で下掲のように論じている。
【8p~9p】

 つまり、この「新発見の252c」等の一連の書簡下書群に対して矢幡洋氏が、

 時折、高圧的な賢治が姿をみせる。…筆者略…と露骨な命令口調で言う。
 露宛の下書き書簡群から伝わってくるものは、背筋がひんやりしてくるような冷酷さである。ここにおける、一点張りの拒否と無配慮とは、賢治の手紙の大半の折り目正しさと比べると、かつての嘉内宛のみずからをさらけ出した書簡群と共に、異様さにおいて際立っている
          〈『【賢治】の心理学』(矢幡洋著、彩流社)154p〉

と論じていることを私は知って、目を醒まさせられたのだった。
 振り返えれば、かなり以前から、これらの書簡下書群に基づけば賢治にはそのような性向があることが導かれることに私は薄々気付いていた。だが、実はかなりのバイアスが私には掛かっていて、これらの書簡下書群に基づいて賢治に対してこのような厳しい言い方を公にすることは許されないのだ、という自己規制が強く働いていたことを覚った。一方で、心理学の専門家である矢幡氏の、この書簡下書群についての冷静で客観的なこの考察に私は反論できなかった。しかも、矢幡氏が指摘しているような「冷酷」さがあの〔聖女のさましてちかづけるもの〕にもあることを私は知ったので、賢治のこの性向はもはや否定できない。
 言い方を変えれば、「252c等の公開」は、露に対してのみならず、賢治に対しても取り返しの付かないことをしてしまったとも言える。というのは、有名人とは雖も、当然賢治にもプライバシー権等があるはずだ。にもかかわらず、あろうことか、第十四巻が私的書簡下書群をその配慮も不十分なままに安易に世間に晒してしまったことにより結果的に、賢治には従来のイメージを覆す、背筋がぞっとするような冷酷さもあったということを世に知らしめてしまったと言えるからである。

《1 》(2021年11月11日撮影)

《2 》(2021年11月11日撮影)

《3 》(2021年11月11日撮影)

《4 》(2021年11月11日撮影)

《5 》(2021年11月11日撮影)

《6 》(2021年11月11日撮影)


 太陽の光を背に、公孫樹が荘厳に輝いていた。

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