みちのくの山野草

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「ほとんど無視されていた千葉恭」

2022-03-24 12:00:00 | 賢治渉猟
《ヤマルリトラノオ》(真昼岳、平成30年7月19日撮影)
もう止めませんか、嘘かもしれない賢治を子どもたちに教えることは。

 さて、拙著『賢治と一緒に暮らした男―千葉恭を尋ねて―』を入沢康夫氏に謹呈したところ、
 これまでほとんど無視されていた千葉恭氏に、御著によって、初めて光が当たりました。伝記研究上で、画期的な業績と存じます。それにしても、貴兄もお書きになっておりますが、当時身辺にいた人々が、どうして千葉氏に言及していないのか、不思議ですね。
            〈『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版)16p~〉
という評を頂いたのだが、まさにその指摘通りで、まず第一に、
 ⑴ なぜ千葉恭はほとんど無視されてきたのであろうか。
そしてその次に、
 ⑵ どうして周縁のにいた人たちが千葉恭について言及しなかったのか。
については、私もとても不思議に思っていた。そこでその後、このことについてさらに調べたみたこともあるので以下に少しだけ述べてみたい。

⑴ なぜ千葉恭は無視されてきたのであろうか。 
 そもそも千葉恭については、自身が著した9篇ほどの追想等(『賢治と一緒に暮らした男-千葉恭を尋ねて-』の2p)があるのだが、千葉以外が著した千葉に関する論考等は唯一、「賢治と千葉恭のこと」〈佐藤成著、『ふるさとケセン67号』(ふるさとケセン社、平成14年3月)所収〉という論考しか見つからなかった。しかも、この「9篇ほどの追想等」に書かれていないこと以外の記述はほぼ「千葉恭は気仙郡盛町の出身」ということだけであった(なお、後に分かったことだが、千葉の出身地は盛町(大船渡)ではなくて、実は真城村(水沢)だった)。そしてもっと不思議だったことは、あの膨大な『校本宮澤賢治全集』は、千葉恭はどこの出身で、いつ頃からいつ頃まで賢治と一緒に暮らしていたかということも含めて、千葉自身のことについては一言も触れていない。千葉が著した追想等を同全集はかなり引用しているというのにだ。だから、たしかに、千葉恭はほとんど無視されてきたと言えるのだが、逆に、それはなぜだったのだろうかという不自然さが増すばかりだ。

⑵ どうして周縁のにいた人たちが千葉恭について言及しなかったのか。
 このことに関しては、先に少しだけ、
   千葉恭と高橋武治(澤里武治)は、羅須地人協会時代前後に共に鎌田旅館に下宿していた
と触れたが、周縁にいた武治はもちろんのこと、藤原嘉藤治も羅須地人協会の会員も誰一人として、千葉に関して言及している人物は誰一人として見つからなかった。
 ところが後に、平來作が千葉について言及していたことを私は知った。というのは、『本統の賢治と本当の露』の23p~25p等に載せてあるのだが、
 「当時身辺にいた」教え子の平來作が、「恭は「羅須地人協会時代」に下根子桜の別宅に来ていた」ということを言及していた
ということを突き止めることができたからだ。しかも、千葉恭の長男と三男がともに、父はマンドリンを持っていたということを証言してくれた(上掲書、10p~11p)からなおさらに、
   『拡がりゆく賢治宇宙』(宮沢賢治イーハトーブ館)の79pの、「時に、マンドリン・平来作、千葉恭」という記載は正しい。
と判断できたからだ。
 しかも、ある資料からも、千葉は賢治と親交が深かったということも裏付けることができた。それは、いわゆる〔施肥表A〕の〔一一〕は千葉恭の実家の水田に対して賢治が設計したものであったということを検証できたからである(詳しくは『本統の賢治と本当の露』の18p~21p)。

 そしてこのことを通じて分かったことは、門外漢で非専門家の私でさえも、調べようとすればそれなりのことを明らかにできるというのに、一方で、専門家である賢治研究者等がいままでそれをほとんど為してこなかったということだ。言い換えれば、千葉恭は賢治にとってかなり重要な人物だったというのに、たしかに、
    これまでほとんど無視されていた千葉恭
であったと言えるし、どうやらそこには、構造的な問題が横たわっていそうだ。

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