フーテンの寅さんこと車寅次郎は、失恋してはいつも黙って去っていく。
そして、遠い旅の空から相手の幸せを祈っているのである。
わたしは母の死に目にも、父の死に目にも会えなかった。
母親は他界した瞬間、北海道にいたわたしにはるばるお別れに来てくれたようだが、父の場合はその形跡はなかった。
男は、別れのあいさつなどというものが照れくさいのかもしれない。
だから去る時がきたら、黙って去っていくのかもしれない。
あるとき、何の話をしていた時だったか、家内に「神との対話」に載っていたこんな話をした。
「人間は死を不幸なことだと思っている。だが、この身体ではもう生長は得られないと判断した魂は肉体を去ろうと決意する。そうしたとき、愛する家族は、そんな弱気なことは言わないで。またきっと良くなるわと励まそうとする。そうした家族の思いは、去ることを決意した魂にとっては負担である。だから、誰もいない時に静かに黙って去って行くのである」と。
すると、家内は言った。
「それでわかった!毎日母も私も面会に行っていたのに、どうしてよりによって、一人の時に急に逝ってしまったのかと思っていたけど、なるほど、それでわかった!」と。
男は何も言わず、黙って去るのである。
そして、寅さんのように遠い空から、あるいは近くで見守り続けているのかもしれない。
もちろん、わたしはできれば「有難う」と言って去りたいと思っている。
しかし、泣かれるのはやっぱり嫌だ。
あるいは、自分の方こそ泣きそうだったら、そんな時にもやっぱり黙って去るかもしれない。
そんな時には、一人にっこり笑って去って行ったんだと思ってもらいたいものだと思う。
そして、遠い旅の空から相手の幸せを祈っているのである。
わたしは母の死に目にも、父の死に目にも会えなかった。
母親は他界した瞬間、北海道にいたわたしにはるばるお別れに来てくれたようだが、父の場合はその形跡はなかった。
男は、別れのあいさつなどというものが照れくさいのかもしれない。
だから去る時がきたら、黙って去っていくのかもしれない。
あるとき、何の話をしていた時だったか、家内に「神との対話」に載っていたこんな話をした。
「人間は死を不幸なことだと思っている。だが、この身体ではもう生長は得られないと判断した魂は肉体を去ろうと決意する。そうしたとき、愛する家族は、そんな弱気なことは言わないで。またきっと良くなるわと励まそうとする。そうした家族の思いは、去ることを決意した魂にとっては負担である。だから、誰もいない時に静かに黙って去って行くのである」と。
すると、家内は言った。
「それでわかった!毎日母も私も面会に行っていたのに、どうしてよりによって、一人の時に急に逝ってしまったのかと思っていたけど、なるほど、それでわかった!」と。
男は何も言わず、黙って去るのである。
そして、寅さんのように遠い空から、あるいは近くで見守り続けているのかもしれない。
もちろん、わたしはできれば「有難う」と言って去りたいと思っている。
しかし、泣かれるのはやっぱり嫌だ。
あるいは、自分の方こそ泣きそうだったら、そんな時にもやっぱり黙って去るかもしれない。
そんな時には、一人にっこり笑って去って行ったんだと思ってもらいたいものだと思う。