気の向くままに

山、花、人生を讃える

本当の父とは?

2018年07月28日 | 人生

中学生で15歳になる少女がいた。彼女の父親は血のつながっている本当の父親ではないが、彼女はまだそのことを知らない。

 

ある時、彼女の母親に友人から1通の手紙が来た。その手紙は、フランスに住んでいた母親が若かりし頃の恋人だった彼―—娘の父親――が他界したことを知らせるものだった。

 

それで母親は、娘に本当のことを知らせる時がきたと判断し、娘に「あなたの本当の父親は・・・」と本当のことを話した。

 

事実を知らされた娘は、なぜもっとそれを早く教えてくれなかったのか、今までほんとうの父だと思っていたのは「ニセモノの父だった」と騙され続けてきたような不信感に襲われた。

 

娘は思う。
「もっと早く知らせてくれてたら、その本当の父に逢うこともできたのに。いくら逢いたくても、もうその父の顔を見ることもできない。それを不可能にしたのは、ニセモノの父ではないか」
「私を妊娠していながら今の父と結婚するなんて何という不潔な母だ。それに父も父だ。他の男の”子”を妊娠している女と結婚するなんて、なんという不潔さだ」と。

 

そして、15歳の少女はすぐにでも不潔な父母のもとから飛び出したい衝動に駆られて悩むのだった。

 

「なぜもっと早く真実を教えてくれなかったのか」と迫る娘に対して、母親は言う。
「あまり幼いときに知らせても、“本当の父親のない子”という劣等感を持つようになってもいけないので、時期を考えていた」と説明する。

 

しかし娘は、
「私の父親の子を孕みながら、他の男の妻になるなんて不潔だ。その不潔な母から生まれた自分も不潔だ」と、どうしてもその思いを拭い去ることができず、悩むのだった。

 

そして、少女は他に相談相手もいないので、中学の担任の女の先生にその悩みを打ち明けた。

 

するとその先生は、
「私はあなたのお母さんを尊敬します。そういう恋人から棄てられたような悲しい状態にありながら、あなたをおろそうともせずに悲しい環境に打ち克って、あなたをここまで育てて来たお母さんを私は尊敬します。そのお母さんの過去を見ないで、お母さんと一緒に、あなたを自分の真実の子として育てて来たお父さんを尊敬します。一度直接お父さんの考えを聴いて御覧なさい」というのであった。

 

それで、少女は父親に尋ねた。
「なぜ他の男の子を孕んでいるお母さんを妻などにしたのですか?」

 

「私は彼女を好きだった。愛していたからだ。それだけだ。他の理由はない。愛する者を愛したとて、どうしてお前はそれを汚れたというのだ。過去は過ぎ去ったことで、もう過去はないのだ。私はお母さんの過去に引っかかろうとは思わなかった」

 

「なぜもっと早く、本当のお父さんが別にあるということをわたしに知らせてくれなかったのですか?」

 

「もし、お前にそれを知らせて、お前がそのお父さんを慕って行くというようなことになれば、そこに悲劇が起こるかもしれない。私はお前を愛しているから、お前を私から奪っていこうとするかもしれないその男を殺す気になったかもしれない。私はお母さんの過去を自分の家庭に持ち込まれ、お前の心の中に持ち込まれるのを好まなかったからだ。」

 

「だってお父さん、あなたはわたしの血のつづいているお父さんではない。本当のお父さんではない。本当のお父さんでもないのに、本当の父のような顔して私をだましつづけて来た」(娘泣く)

 

「15年間、自分の本当の娘と思って愛してきたのに、ただ、血がつながっていないというだけで、お前はわたしを“本当の父”ではないというのか。“本当の父”というのは、ただ血がつながっているだけで、お腹の中にいるお前を棄てたその男の方が“本当の父”だというのか。“本当の父”というのはそんな浅墓なことなのか。15年間も“本当の娘”として“父”としてお前を愛し育ててきた愛はそのままで何の価値も認められずに、空しくなって行くものか」

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以上は古い『生長の家』誌の中に紹介されていたテレビドラマ(「中学生の群像」という番組)のあらすじですが、考えさせられるところがあったので、少し編集してここに紹介させていただいたものです。

 

そして、このドラマの最後は、
「過去はないのだ。今ここに、本当の父と娘とがあるではないか」という意味の言葉で、娘の心は落ち着き、the endとなったようです。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しかし、それにしても「本当の父親」ってなんですかねえ。
もし、自分がこの娘だったら・・・やっぱり、この娘のように悩むだろうし、
この父親だったら・・・やっぱりこの父親のように、娘に向かって同じことを言うだろうと思う。
しかし、娘だったら・・・はたしてこの父親の言葉に納得しただろうか?

多分、20代が終わるころまでは自分の運命をアレコレと考えざるをえなかったに違いないと思う。
そして、そのことがきっかけとなって、人間について、人生について、本を読み考えたりし、そうしているうちにも人生は先へと進んで行き、そのうちに結婚し、子供ができ親となり、さらに孫ができるころになると、きっとそれで良かったと思えるようになるのではないか。

そんなふうに考えられるようになるのは、自分も人生を生き、人生が必ずしも自分の思うようにはならないことを学び、父や、母の苦しみや、それに負けず頑張って自分を愛し、育ててくれたことを、自分の人生と重ね合わせて理解できるようになるからだろう。そうなったとき、父よありがとう、母よありがとうと、心から感謝できるようになっているのではないか。
そして、そんなことをぼんやり考えていると、自分の父、母が恋しく懐かしくなってきたことでした。

そういえば、もうすぐ8月、盆ですね。

          

          父母のしきりに恋し雉の声   (芭蕉)

 

          闇の夜に鳴かぬ鴉の声聞けば 生まれぬ先の父母ぞ恋しき   (道元禅師)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

伊吹山からの夕焼け

2018年07月26日 | 

24日(火)、久しぶりに伊吹山(1377m)からの夕景を見たくなり、かといって歩いて登る元気もないので、車で山頂駐車場まで行くことにした。

道中すこぶる順調で、午後1時30分に家を出て、山頂駐車場には3時15分に到着した。猛暑のせいか、この時期にしては駐車している車が少なく、だだっ広い駐車場に数えるほどしかなかった。

レストハウスでコーヒーを飲み、少し時間をつぶしてから、のんびり花の写真を撮りながら100mほど登り、40分で山頂に到着。

しかし、上空は青く澄んだ上天気だが、あいにくと下界は視界が悪く、山並みや琵琶湖もどんよりとかすんでよく見えない。花々はまだ時期が早いのか、鹿の食害の影響か、あるいは暑さや水不足のせいかわからないが精彩がない。そして、いつの間にか鹿の食害を防ぐための金網のフェンスが到る所に設けられていて景観も台無しで、変わり果てた姿に驚いた。3年前に登ったときには、まだこのようなフェンスはなかったが。

しかし、これも植物保護のためには仕方がないことかもしれない。帰りに夜のスカイラインを走っているとき、3回も鹿に遭遇し、鹿が増えているのを実感した。

山頂から、暮れて行く琵琶湖や山並み、そして夕焼けを見る予定だったが、視界はよくないし、うかつにも懐中電灯も忘れたので、おにぎりで腹ごしらえをした後、別コースをゆっくり散策しながら駐車場へ戻った。そしてレストハウスのテラスから夕焼けを楽しむことにした。

以下はその時の写真です。

 

山頂への途中から駐車場方面を望む

 

北方面の山並み

 

山頂付近の花畑。色とりどりに花が咲き乱れる所だが、時期が早いのか、メタカラコウのみが目立っていた。

 

18時58分、日没前

 

19時10分、夕焼けが始まったが、いったんはこの程度で終わるかに見えた。しかし、この後、突如として真っ赤に輝き出し、うれしいサプライズだった。

 

写真はあまりきれいではないが、実際は真っ赤に夕焼けて、移り変わる空の変化をたっぷり楽しむことができました。以下はそのクライマックス時の写真。

19時16分  夕焼けの空の下、かすかに琵琶湖が見えている。

 

19時17分

 

19時20分

 

19時25分

 

スカイラインは以前と違って夜間営業してないとのことで、9時にはスカイライン入り口のゲートを出なければならず、そのため8時に駐車場を後にした。

 

案内によると、8月11日からお盆の間、夜間も営業し、しし座流星群の観察会があるとのこと。天気さえよければ、この頃は新月だから、天の川も見られるかもしれない。駐車場の混雑は覚悟しなければならないが。

 

以下は2009年8月の伊吹山からの夕景ですが、この時は、夕焼ける雲が一つもなく夕焼けは見れなかったが、暮れていく山並みや琵琶湖の夕景を堪能しました。

 

琵琶湖北部と竹生島

 

琵琶湖中・南部

 

暮れ行く山並み。一番奥は白山(2,702m)。その手前は能郷白山

 

最後まで見ていただき、ありがとうございました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どうぞ、伊勢エビにはなりませんように

2018年07月19日 | 地球温暖化について

わたしの好きなテレビ番組の一つに「Youは何しに日本へ」という番組があります。
空港で外国人にインタビューし、面白そうなものがあると密着取材するという番組です。

ある時、ある国の日本へ留学しているという女子学生が、これから伊勢エビを買い、それを料理して食べるというので、それに密着したときの様子が放送されたことがありました。

 

伊勢エビを煮る場面では、留学生はまず鍋に水を入れ、それを沸騰させ、そこに伊勢エビを放り込みました。すると伊勢エビは、「熱い!」といわんばかりに勢いよく飛び跳ね、女子留学生もそれを予想していなかったらしく、びっくりしておりました。

 

それで、ディレクターから「水が沸騰してから入れるのではなく、最初から水の中に伊勢エビを入れて煮れば飛び跳ねないよ」と教えられ、その通りやり直すと、今度は伊勢エビも飛び跳ねることもなく無事に煮ることができたのでした。

 

地球温暖化が叫ばれるようになって久しいが、一方、懐疑的な人たちもいるようである。
気候の問題はいろいろな要素が複雑に絡み合い、むつかしいところもあるようですが、しかし、「誰の目にも明らか」になったときには、すでに遅すぎやしないただろうか。(素人目には、もう充分にハッキリしつつあるように思えるが)

 

現在、産業革命以後(人類が化石燃料を使い始めてから)、地球の平均気温は0.8度上昇していると言います。そして、この上昇が2度あるいは3度になると、悪循環に拍車がかかり、「もう後戻りはできなくなる」とIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は警告しています。

 

今、人類は、じわじわと煮られながら、その事に気づかずにいる伊勢エビではないかと、冷めた風呂水につかり、火照る身体を冷やしながら、思わずこんなことを考えてしまうのでありました。

 

それにしても、暑いですねえ。
皆さん、熱中症には十分気を付けてください。
人間、何か始めると、つい「もう少し、もう少し」と頑張ってしまいますから。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

描いた夢は破れても・・・

2018年07月10日 | 読書


神は人間に自由を与え給うた。
そして、神は無限の愛であるから、罰は与え給うことは決してない。
では、自殺者は死んだらどうなるか?



死んだとたんに、死んでも何も解決しないことを知り、とんでもないことをしてしまったと猛烈な慙愧の念に駆られ、他の人に合わせる顔がないというわけで、みずから真っ暗闇の中に閉じこもってしまい、そこで反省の日々を過ごすそうだ。
(いわゆる「穴があったら入りたい」の心境)


ただし、その一方では、自殺者本人が言うには、真っ暗闇とは言っても、なんとなく愛に包まれている感じもするとのこと。



ある自殺者がその真っ暗闇の中で光を見つけた。そして、その光に向かって「あのう・・・」と話しかけた。その話しかけられた光とは、当時大学3年生の飯田史彦さんだった。
飯田史彦さんは「ん?何だろう?」と耳を傾けると、再び「あのう・・・」という声が聞こえたので、「何ですか?」と返事をした。そこから、世にも不思議な物語がはじまった。



飯田史彦さんは当時、まだ唯物論者だったそうで、自分の脳がおかしくなってしまったのではと恐れたのですが、興味深々たるやりとりの末、最後はその自殺者に頼まれるままに、残された両親の家を訪ねることになる。



自殺したその青年が言うには、好きな女性がいて、彼女の誕生日にプロポーズするつもりで逢ってほしいと電話をした。ところが断られてしまい、その失恋のショックで発作的に自殺してしまった。それで両親に事の真相を話して謝りたいのだという。



残された両親は息子の自殺の理由が分からず、生前、毎日仕事で遅くに帰ってきていたので、過労のせいに違いないと会社を恨み、訴訟さえ起こそうとしていた。だが、会社を恨んでいては両親は救われないし、自分自身も罪悪感から解放されない。それで自殺の真相を伝え、両親を恨みから解放したいのだった。そして、自分をふったその女性には何の罪もなく、恨まないでほしいということも伝えたかった。



飯田史彦は「狂人扱いにされるに決まっている」と、家の前まで来てなお躊躇するのだが、自殺した魂に勝手に自分の口を動かされて両親に話しかけた。



すべての真相が、自殺者から飯田史彦へ、飯田史彦から両親へと知らされる。
もちろん両親は突然のこのような話をはじめから素直に信じるわけはない。
しかし、やがてはその情報の正確さに信じざるを得なくなり、最後は、目には見えないが、自殺した息子との感動的な対面となる。そして、息子は大丈夫なんだとはっきり知る。



これは「生きがいの創造2」にあった話で、4、5回は読んだと思うが、読むたびに泣かされてしまう感動的な話だ。10人近くの人にすすめたが、電車の中では読まないようにと、あらかじめ警告している。大泣きしてしまう危険がないとも限らないからだ。



自殺者の話がもう一つ載せられている。
自殺した夫から、残された奥さんへのメッセージだ。その時の会話の一部始終が、今、目の前で起きているように、生々しく、そして、さらに感動的に語られている。



読後、感動とともにすごく優しい気分に包まれる。
これを読んでわかるのは、自殺しても苦しさから逃れることができないこと、それどころか、一層激しい自責の念に駆られて苦しまなければならないこと。しかし、そういう経過をたどるものの、いつまでもその状態が続くわけではなく、「自殺した者も大丈夫なんだ!」ということ。そして、最後に神の救いはあらゆるところに行き届いているということ。



誰も好き好んで自殺する者はいない。さんざん苦しみ、苦しみぬいた揚句の果てに自らの命を絶ち、さらにその果てには本人にも、残された家族にも耐えがたい苦しみと悲しみが待っているのではやり切れない。
生まれ変わったとき、また同じような状況が来るかもしれないが、もしそうだとしても、それはもう一度やり直すチャンスなのだ。

    描いた夢は破れても、あなたはまだ夢を描く自由があるのだ。
    兄弟よ倒れ切るな、倒れても起き上がれ!
    失敗のたびごとに あなたは希望の実現に近づいていることを知れ。

                              (「生長の家」創始者 谷口雅春先生 「夢を描け」より)

と、神は限りなき愛をもって激励し給うのだ。



こうして、「生きがいの創造」シリーズの著者、飯田史彦先生は今日まですべて自費で北海道から九州まで、忙しい公務(大学教授)の合間を縫ってメッセンジャーとしてのボランティア活動をしておられるとのこと。
                 (今は「大学教授のままでは思うように活動できない」ということで退官されている)


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「今井美沙子」さんの話に感動

2018年07月05日 | 信仰

シスター・鈴木秀子さんについて検索しているうちに、同じくカトリックのシスターであるらしい渡辺和子という人の「キリストの香り」と題するYou Tubeにたどり着き、このところ、それを毎日少しづつ聴いていました。

 

この人は9歳の時、目の前でお父さんが陸軍将兵によって30数発もの弾丸を浴び射殺されたとのこと。いわゆる2.26事件である。その後、29歳の時アメリカにわたり、シスターとなるべく5年間の修行生活をされ、そして晴れてシスターになられたらしい。このテレビでの講話をされたのは御年88歳であられたようだ。

 

毎回の講話の時間はおよそ12分ぐらいで聴くにはちょうど良い時間だし、心に染みる善い話ばかりなので、毎回感動しながら聞かせてもらいました。そして、わたしはクリスチャンではないけれども、「この人は人間国宝」だと思いながら聞いていました。これからも聞かせてもらうことになるだろうと思います。

 

それからシスター・渡辺和子さんの話を聞いているうちに、今度は違う人が出て来たので、試しにそれも聞いてみました。この人の名前は「今井美沙子」さんといいます。長崎五島列島の福江島で高校卒業まで住まれていたとのこと。この人はシスターではなく、仏教的に言えば出家の人ではなく在家の人であるが、この人の話がまた、また素晴らしいのです。まだ、すべてではなく10回までしか聞いていませんが、シスターとはまた違った、在家の、いわゆるどこにでもいそうな庶民の、それでいて、何とも言えない、温かみと味があり、「こんな世界が本当にあるのか」と思わせるようなお話です。あらためて世界の広さ、人の世の奥深さを知らされた感じです。

 

そして、実際にこの人の書いた本を読んで、そういう生活にあこがれ、島に移住してきた人もいるらしいのですが、さもありなんと思いました。わたしも移住はできないものの、できるものなら一度福江島を訪ねてみたいと思いましたし、この人の講演会が近くにあるなら飛んでいきたいと思いました。つまり、それぐらいいい話が聞けるということです。天草の方言が耳にとても心地よい。

 

下のアドレスをクリックすればYou Tube、今井美沙子さんの「白いごはんは多めに」と題する話が聞けます。

https://www.youtube.com/watch?v=-ySGggUiqmE&list=PL12z5ETpOGHkk6jkumwop53YZcASVzY3o&index=3&t=0s

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする