東海道自然歩道を茨木から高槻へ抜ける林道沿いの谷筋に群生する気になる木がありました。ササゲに似た30㎝ほどもある果実を多数垂れ下げているのでキササゲ:木大角豆・木豇(ノウゼンカズラ科キササゲ属)には違いないのですが、問題は花を見ていないのでキササゲなのかアメリカキササゲなのか分からないことでした。
公園で見て花の時期と思って行ったとき蕾、2回目で初めて薄黄色の花に出会い、キササゲだと確認しました。
両種とも日本の自生種ではなくて、キササゲは中国原産ですが、万葉集にも出てくるという古い渡来種で、古くから薬用や観賞用に植えられ、今では野生化もしています。6~7月枝先に淡黄色で、漏斗型の花を円錐状につけます。
中国名は梓樹、長いさく果は生薬で梓実といわれ利尿、解毒などの薬になります。梓は日本ではカバノキ科のアズサ〈ヨグソミネバリ〉を指しますが、本来はキササゲの同属別種のことです。アメリカキササゲは北アメリカ原産で明治時代に渡来したといわれ、花が白色で内側に紫色の斑点があることで区別されます。
以前にも書きましたが、キササゲは漢名では木偏に秋で楸〈シュウ〉です。面白いことには木偏に冬の柊〈ヒイラギ〉もおなじくシュウと読みます。
俳人の加藤楸邨は、はじめ柊村(しゅうそん)と名乗っていましたが“とうそん”と読むひとが多いので、楸村、木がごたつくので楸邨にしたといいます。一方、昭和の歌人宮 柊二はそのまま“しゅうじ”です。
ついでに木偏に春の椿でツバキを指すのは国字で、中国ではチン、センダン科のチャンチンを指し、椿は山茶と書きます。
木偏に夏の榎をエノキに充てるのも国字で、中国ではカ、檟とも書き、“ひさぎ”すなわちキササゲを指します。中国では楸も榎も同じキササゲとなります。(ひさぎはアカメガシワの古名ともいわれます)
木偏に冬をヒイラギに充てるのも国字で、中国ではショウガの1種で葉は芭蕉に似る、とあります。
木偏に春・夏・冬の3字は、本家の中国よりも、日本の国字の方が季節感で優れている気がします。