ウラハグサ:裏葉草(イネ科ウラハグサ属)は、渓流沿いの岩場や崖などに生える多年草で、風知草という名で観賞用に植えられています。
もともと、葉の表・裏は茎に対している面が表、その反対が裏と人間が勝手に決めており、たとえばネギの筒状の葉は、緑色の筒の表面が葉の裏で、内側の白っぽい面が葉の表という約束になっています。
ウラハグサは、自生地の環境から見て当然といえますが、ふつう茎が垂れ下る形になっており、いうところの裏面が表側になっていて緑色を呈し、本来の表は裏側になって表面が白っぽくなっています。葉の基部が180度ねじれている、とする図鑑もありますが、葉自体がねじれているわけではありません。
終戦直後宮本百合子は「風知草」を書いて、毎日新聞文化賞を受けています。
思想犯として終戦まで長年獄中にいた年下の夫宮本顕治と同じく、一時未決囚として獄中にいた百合子が、差し入れを受けた鉢植えの名札で風知草の名を知ります。「かぜしりぐさ」とも呼ばれることを知らなかったという百合子ですが、作品の中では「風知草」そのものは出てきません。
風がそよとも動かない狭い女囚房にあって、百合子は「風知草」にどんな思いを託そうとしたのでしょうか。