朝寒

朝寒し日差し明るい窓に寄る
逆光に枝切る人の寒き影
古畳冬の日差しの入りくる

咳

咳こめば幼なき日のこと母のこと
それぞれの水脈揺らし鴨は来る
友の合図冬の街角車椅子

雪の結晶

子ら来れば島の話を鍋囲む
泣き笑う幼なはすでに布団中
窓につく雪の結晶浮かびくる

寒月

寒月を頭上において夫を待つ
年の瀬に分厚き句集手渡たさる
靴音の寒さ増しくる更けゆけば

毛糸帽プラットホームは吹きざらし
池に影映して冬鳥低く飛ぶ
子らくれし手製のリース部屋にあり

つらら

のろのろと慣れぬ雪道走る朝
歯型とる雪は斜めに降りしきる
花びらに小さなつらら見つけたり

きつね

山斜面ふと見れば狐にらみっこ
お互いに目をはなさずきつねと吾
霜の田に登校児らの影うごく

病院の帰り茨木市の真龍寺さんへ寄る、裏の山の斜面でがさがさと落葉が落ちる音、しっぽのふさふさした狐に会う。お互いにびっくり。この寺は龍の寺で、境内に機関車も展示してある。

初氷

年の瀬に鋏の音の枝葉刈る
冬雲の湧きたつ朝の橋渡る
初氷つんつん水槽くだきゆく

年賀状

それぞれの幼なにあてて年賀状
風冷ゆる気づけば丸くなる姿勢
手に重き今朝の大根安くなる

冬帽子

しゃがみこむ菜畑に見える冬帽子
冬窓の干し物大きく揺れる影
白菜巻く縄でくくらる畑の列

落ち葉

着地まで落ち葉は流れ風にのる
冬堤校庭の見え子らの見え
風邪ひきの二人で作るだまし舟