再び川根温泉笹間渡駅に戻り電車に乗る。
次の地名駅を過ぎ、暫く走ると何とも小さなトンネル(?)を潜る。
うっかりしていると見過ごしてしまいそうなくらい、アッと言う間の通過である。
長さ約11メートル、地元では日本一短いトンネルとして親しまれているらしい。
元々は、この線路の上を横切っていた荷物運搬用の索道の施設で、線路に物が落ちないように
保護する目的で造られたものらしい。
ここら辺りは、大井川もかなり上流域に成るはずなのに、まだまだ川幅も広く滔々と流れている。
雨を受ける対岸のさくら並木や、茶畑の広がる風景を見ながら、40分程で終点の千頭駅に到着する。
駅に着いて驚いた。
ホームの手前には、明治三十年製と言われる手回し式の転車台が有る。
まだ現役で使われているらしく、有形文化財として登録されている。
広い駅構内には、C11形、C10形や9600形のSLや、トロッコ列車、電気機関車、京阪や南海の
車両などが見える。しかもこれらは動態保存と言うよりは、今も現役として活躍しているのだから
驚かされる。
土をむき出しにした長いプラットホームには、濃いチョコレート色の、長い客車が停留されている。
突然目の前に広がったセピア色の世界、幼いころのSL全盛時代を彷彿させる情景に、遠い昔に
帰ったようで、なんだか涙が出る程の懐かしさが込み上げてくる。
温か味の有る客車は、いつまで見ていても見飽きないのが不思議だ。
興奮冷めやらぬ昂ぶりを残したまま、今晩の宿のある寸又峡温泉に向かう。
山深い温泉は、ここからバスで40分程の距離だ。(続)
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