横川駅前から旧国道18号線を行く一日一往復のJRバスに乗る。
「めがねバス」の愛称で知られるバスは、つづら折りの急坂を上る。
その車窓には、時折旧線のレンガ造の構造物を目にすることも出来る。
バスはおよそ20分ほどで熊ノ平駐車場に到着する。
駐車場を抜け、国道を渡るとそこが「アプトの道」入口で、100段ほどの階段
が山の急な斜面に造られている。良く整備された道で、それを登り詰めると旧信
越本線の熊ノ平駅跡である。ここから「アプトの道」は横川駅まで下っていく。
ここには当時のものと思われる2面のホームの跡や、赤茶けて錆びた上り下
り2本の線路、架線や、煤で黒く汚れた変電所の白い建物(昭和になって新設
されたものらしい)などが残されている。両線の間に有ったと思われる留置線
は撤去されていて、そこが整地され遊歩道になっている。
駅の先では単線に絞られたレールが軽井沢方面に向かって残されているが、
その先のトンネルの入口は封鎖されていて、その先を見通すことは出来ない。
軽井沢側では、遊歩道の整備はされていないと言う。
当時は旧碓氷線が単線であったため、上り下りの列車の行き違いと、蒸気
機関車への給水や石炭の積み込みが主の目的で造られた駅である。
駅とは言えアプト式鉄道の廃止後は信号所扱いとなっているので、乗客の扱
いはほぼなかったのであろう。この駅の前後は山肌と崖に挟まれた平地の乏
しい所で、周辺には民家らしい建物も、その跡地らしいものも見当たらない。
碓氷峠のトンネルと言えば少し前、「第17隧道」の内壁2カ所に、塗料で
された落書きが見つかったとの新聞報道があった。本来は立ち入りが禁止さ
れた貴重な文化財に対する行為に、関係者からは憤りの声が上がったと言う。
また過去には、レールが切断され盗まれるという被害もあったらしい。
折角の文化財である。大切に守り続けたいもので有る。(続)
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