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music for the photos

2013-07-01 | music
"anton corbijn:inside out"
a klaartje quirjn's film 2012

 ポップからへヴィまでジャンルにこだわることなく、第一線のミュージシャンを被写体にしてきた音楽フォトグラファーの軌跡を収めたドキュメンタリー映画『アントン・コービン:伝説のロック・フォトグラファーの光と影』を観ました。
 アントン・コービンと言ってピンとこない人でも、写真を見れば、「ああ、この写真、この人が撮ってたんだぁ」と思うはず。デヴィッド・ボウイのフンドシ写真とか。映画は、アントンが30年以上にわたって撮ってきた有名アーティストたちの写真を、ざっと見せることで、彼がどんな写真家であるか説明します。U2は彼の顧客のトップ・リストに上がっていますが、メタリカやビートルズのメンバー(故ジョージ・ハリスンとか)まで撮っていたとは知りませんでした。
 監督は、アントンと同郷オランダ人のクラ-チェ・クイラインズという女性。4年間密着取材して撮った映像は、膨大な量だったと思いますが、巧みに90分弱にまとめてありました。
 ロック・フォトグラファーという裏方職人の表の顔(仕事中)と裏の顔(オフ)とは?華やかなショウビズの世界で、どんな風に働いているのか?セレブのパーティやらなにやらで、おいしいおこぼれもあるんじゃないの?長身で、若い頃は結構イケてたし…。などと週刊誌の芸能ニュースを読むような好奇心もあったのですが、すぐ否定されました。

 アントンが多くのミュージシャンに支持される理由は、クライアント(被写体となるミュージシャン)が「こんな感じがいいな」と漠然と思っているような画像に撮ってくれるから、だそうです。U2のボノは「写真の自分になりたい」とまで言ったそうです。確かに、アントンに撮られた被写体は、かっこいいんですが嫌味がありません。そこには、彼自身の性格が投影されているかのようです。ダークでシリアスなトーン、適度な緊張感と安堵感のバランスがとれたアングル。映画で、オフのアントンが自己について語っていて気付きましたが、彼の写真の特徴は、彼の性質そのものだと思いました。真面目serious―パーティは苦手、どこにでもいそうな仕事人間、といった感じです。そうはいうものの、ショウビズの世界でそんなにストイックでいられたの?映画の中には、一緒に仕事をしたミュージシャン達のインタビューも挿入されています。
 当たり障りの無い中で、付き合いの長いデペッシュ・モードのマーティンだけが、おちゃめなエピソードを暴露してくれました。2人の居た場所は、久しぶりに訪れたビリヤード場。マーティンはTシャツに短パンというリラックスしすぎな格好で、さりげなく「こんなこともあったよね」とアントンの若気の至りを暴露すると、アントンは真っ赤になって照れ笑い。このドキュメンタリー映画の中で、唯一、彼の「素」が垣間見れたショットでした。
 そのDepeche Modeの13作目のアルバムが今年3月下旬に発売されました。4曲ボーナス・トラックが付いている初回限定盤を購入。写真集を兼ねた紙のスリーブで、50歳を過ぎたオッサンの写真集もないだろ、と思いましたが、撮ったのはアントン・コービンです。サングラス掛けてるとU2と似てますね。
 さて、メンバーが3人になってから曲作りのマーティンへの比重が重たすぎるのか、デイヴ作の曲も増えて、今回は5曲。そしてマーティンとの共作が1曲。先行シングル『Heaven』がアコースティックピアノをフィーチャーした、暗くて重たいノスタルジックな曲だったので、私の好きなDM路線かと思っていたのですが、全曲新曲にもかかわらず、以前聞いたことあるような―BROKENは最初A QUESTION OF TIMEですし―メロディが耳に付くのは、私だけでないでしょう。こういった現象は、長く続いているバンドにはよくある事ですが、今作はサウンドの面でも80・90年代の音、それも2nd『A Broken Frame』とか3rd 『Construction time again』のような初期の音が散りばめられていたので、無性に1stから6thまで聴きたくなり、ひっぱりだして聴いてしまいました。
左:2nd 右:3rd ジャケ写:M.アトキンス
 そこで思いました。まさか作曲者のマーティンが昔の曲を忘れてるわけないですし、仮にそうだとしても他の人が「これ、あの曲に酷似してないか?」くらい言うでしょうから、これは故意にやっているのではないか、と。全作持っているファンは、懐かしのサウンドに胸がキュンとなり、『Violator』以降のファンは古いアルバムを買い求めて聴くかもしれない・・・そんな効果を狙って?
左:4th 右:5th  ジャケ写:M.アトキンス
 この頃のスリーブ・フォトは、マーティン・アトキンス氏で、2ndと3rd に写ってる人物はmuteレコードの社長・ダニエル・ミラー氏です。泣きのメロディとハンマービートの融合が絶妙なエレポップを確立した『some great reward』、現在のDMには欠かせないオカルト的ゴシック・サウンドを打ち立てた『Black Celebration』、その延長上にある『music for the masses』、アメリカで成功を射止めた『101』。ここが頂点だと私は思いました。正直、アメリカへ渡った後の『Violator』は余り聴く気が湧かない作品でした。ジャケ写をアントン・コービンに変えたのも『101』からで、マーティンはアントンの映画で「とにかくアイドル的な印象を排除したかった。アントンの写真はシリアスだろ?」と語っていました。確かに、アントンのジャケ写は、DMの妖しいダークな面を全面に出したもので、その後の宗教的なサウンドとシンクロしていました。では、M.アトキンスの写真がアイドル的か、といえば、こちらはDMというメンバーのイメージというよりは、アルバムの音を連想させる冷徹な印象のアート作品だと思いますが。
 ジャケ写も変わり、時代も変わって音も変化しましたが、『songs of faith and devotion』の後アラン・ワイルダーが脱退し、3人になってしまった『ULTRA』『exciter』は、なんとか穴埋めできていたので、アランの脱退はさほど影響なかったのかと、いままで思っていました。しかし、今作『Delta Machine』を聴いて、そうでもなかったと感じました。Delta Machineの気持ち悪くなるようなリズム、単調で粗いリズム。前作『sound of the universe』でも感じてましたが(11枚目のアルバムだけは持っていません)、今回はひどいです。パーカッションなどのアレンジもやっていたアランがいないからか、と思ってしまいます。これが今のエレクトロニカだ、といわれてしまえば仕方ないですが。だとしたら、今のサウンドは「詰めが甘い」音が多いのかな、と思います。
残念です。
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