いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

アーロン捕虜収容所

2006年03月30日 13時20分09秒 | ハマ風は踊る
 過日、ある週刊誌に「荒川静香は卑怯な女王」なる見出しに、NYタイムズ・
NBCほか猛烈批判続々とあり、もしや人種差別かなと思い、その週刊誌を購
入した。
 その内容は、「荒川はライバルが転んだからタナボタで優勝できた」「荒川
は自分の演技の後、選手たちが自分の点数を抜けないのを見るたびにコーチと
ともに控え室で笑っていたところをカメラは映し出した」「荒川はクリーンな
演技をした。しかし、2回の3回転・3回転のジャンプを3回転・2回転にラ
ンクを落とした。…そして他の選手を明らかに凌ぐものの、見たところ努力を
必要としないスピンとスパイラルで審判の評価を勝ち取った」などが記載され
ていた。
 思うに、フィギアスケートは欧米の競技と自負していたのが、アジアの黄色
人種に優勝をさらわれたといった敗北感が、荒川選手の演技を中傷誹謗するこ
とになったのではないか。その点、日本はどうか。柔道にしても相撲にしても
その強者を称えている。
 蛇足だが、その週刊誌は、「やい、ニューヨーク・タイムズ!4年後のバン
クーバーにはジャンプキレ、キレの浅田真央も行くかんな、待ってろよ!」と
結んでいる。
 ここで、平成10年10月に記した己の文章を思い出し再読してみた。

 ビルマでの捕虜体験を通じ西洋文明を批判したベストセラー「アーロン収容
所」(昭和37年)の著者で京都大名誉教授の会田雄次氏は平成10年9月に
81歳で逝去された。
 「アーロン収容所」は、英国の日本人捕虜に対する虐待を描いたもので、
例えば
 ① 飢えに苦しんでいる時、赤痢菌をたっぷり蓄えた川ガニしかいない川の
  中洲に捕虜を放置し、カニを食いつなぐしかない状況に置いて『日本兵は
  衛生観念不足で、自制心も乏しく、英軍のたび重なる警告にもかかわらず、
  生ガニを捕食し、疫病にかかって全滅した。まことに遺憾である』と報告
  している。

 ② 食事に供されていた米はビルマの下等米で、粉米、臭く、3割ぐらい
  泥と砂が混じる米の支給に抗議したところ『日本軍に支給している米は、
  当ビルマにおいて、家畜飼料として使用し、なんら害なきものである』
  と答えた。

 ③ 英国人の女性士官が目の前で裸になって服を着替えた。「英国人の目に
  はアジア人など、犬猫のたぐいに見えるのだろう。しかし、フランス人や 
  アイルランド人の前では裸にならなかった」など言語に絶する悲惨な体験
を語っている。
 そして、著者は、白人以外は人間と認めず、「目には目、歯には歯」の復習
を鉄則とし、陰険、狡猾、冷酷、残忍、尊大、傲慢、老獪、偽善を常とする、
それが英国の真実であると肌で知ったと語る。従って、日本人を人間以下とみ
る英国人捕虜が日本人兵士に殴られたら、同じ目にあった日本人捕虜以上に、
恨み骨髄に徹するところに英国人の人種観に問題はないか、と著者は問うてい
る。
 平成10年5月26日。天皇、皇后両陛下の英国訪問に対し、第二次大戦
中に日本軍に捕らえられた元戦争捕虜が、謝罪を求める抗議活動を行った。
両陛下の馬車列に背を向け、謝罪と補償を求め、インデペンデント紙は「あな
たは彼を許せるか」との見出しで、凶悪犯と一緒に天皇陛下の写真を掲載した。
 英国人捕虜問題が再燃したのは、平成5年8月に細川元首相が「先の戦争は
侵略戦争で、間違った戦争だったと認識している」であり、次いで、平成7年
8月。社会党の村山首相による戦後50年談話で「植民地支配と侵略に対して
改めて痛切な反省の意を表し、心からのおわびの気持ちを表明いたします」
そして、平成10年1月橋本首相は、英大衆紙「ザ・サン」に旧日本軍の英国
人捕虜の扱いについて謝罪と反省を表明した文章を寄稿した。
 これで日本の最高指導者による対英謝罪は三度を数える。これと同様な例
が、平成5年8月根拠のないまま「従軍慰安婦の強制連行」を認めた河野官房
長官談話である。この談話を基にして、平成10年8月、国連人権小委員会は
日本に賠償勧告を行った。
 香港返還の際のチャーチル皇太子は、英国の支配が「民主主義、自由、繁栄
をもたらした」と自画自賛。「謝罪する国」日本と「謝罪をしない国」英国。
 故塚本幸一氏は、インパール捕虜時代、上記の③以上の虐待を受けたが、こ
れを前向きに捕えて世界のワコールを育て上げた。日本人捕虜には、英国人以
上に怨念を抱いているが語らない。それを表明させる社会環境にない。いつの
日か、きっと、「アーロン収容所」等の事実が事実として世界に表明できる日
本になってほしい。そして、精神の拠り所を持ち毅然とした曲がらない強固な
日本の背骨の構築を願う。

 と記しているが、今の日本の状況は、8年前とは変わっていない。次期総理
には小泉総理の意志を受け継ぐ人になってもらいたい。

 アーロン収容所(西欧ヒューマニズムの限界) 会田雄次著
   昭和34年11月15日初版
   昭和49年 8月15日45版
   中央公論社発行
  
 追記 天皇陛下ご訪英に際しての行動に対しこのような投稿があった。
      元英軍捕虜の抗議に怒り!と題して
   『…思えば終戦後、英軍当局こそ国際法を無視し、数万人の日本軍人、
    軍属を捕虜収容所に収容、重労働に就労せしめました。しかし、この
    暴虐な報復行為を約二年余りにわたり行使したことを、今日までただ
    の1回も弁明、謝罪したときいたことがありません。私は当時の捕虜
    の一人ですが……』と当時75歳の方が投稿されていた。

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