いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

おつかれさん (第5編)

2005年06月29日 08時44分26秒 | 娘のエッセイ
 「ムムッ、なんだ? これはー」
ある日、ふと鏡の中に発見してしまった……。それは、私の愛くるしい? 瞳の
下にいつの間にか巣食っていた、小憎らしいクマだったのである。

 こりゃ、大変!とばかりに、私は即刻ここ数カ月の雑誌をひっくり返し、化粧品
特集のページを読み漁った。そして、翌日すぐにデパートへ。目星をつけておい
たフランスC社のカウンターへと直行した。そこで私は、やたらと化粧の濃い
オネエサマのアドバイスを受け、昼用のアイジェルと夜用のアイクリームを買
い、「これで、クマともオサラバダ!」とウキウキして帰宅したのである。

 アドバイスに忠実な私は、翌日からさっそく昼はジエルを持ち歩き、洗面所へ
行く度にジエルを手に取り、薬指でトントンと下瞼につける、ということを行った。
もちろん、夜のケアも怠りはない。

 でも、私のクマは一向に消えてはくれなかった。「ああ、やっぱりこの職業が
いけないのかもしれない」。私は、目の前のCADを睨みつける。そう、あんただ
って疲れちゃうわよね。1日8時間、週48時間もこんなディスプレイと、細かい図
面を正確に見ないといけないんだものね。私は、制服のポケットから二種類の
目薬を取り出し、乾き切った瞳にそっと液体を垂らした。

 あれから、もう1年以上が過ぎた。転職し、CADから解放された私だったが、
なんの因果か、今度の仕事もコンピュターとお友達、なのだ。ゆえに、私の下
のクマは今もしっかりと健在? である。でも今度は仕事のせいではなく、もし
かしたら、年齢のせいかもしれない……そんな不安がよぎる。

 果たして、今日も私は「リッチな化粧品が欲しいっ」と思いつつ、30ml六千円
のハーブ入り美容液を下瞼にせっせとたたきこむのに余念がない。
 あーあ、おつかれさんな話。
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