朝七時。部屋の真ん中に置いてあるコンピューターが、「起きて・起きて」と優
しい声で僕を起こしてくれる。僕は着替えて、食堂でひとりきりの朝食を食べる。
僕が部屋に戻ると、もうコンピュターの画面ではホームルームが始まっていた。
担任のH先生が少し怖い顔をしたが、直ちに一時限目の授業を始めた。今日
は金曜日なので、授業は午前中で終わりだ。授業が終わったら、太一君と会
おう。
ママは、今日から温泉旅行に友達と行くのだそうだ。朝からカタカタとキー
ボードでお喋りをしていて、うるさい。休憩時間に、僕はちょっとママのネット
を覗いてみる。
どうやらママは、箱根のジャングル風呂に行くことにし、アレを着る。
『体感服』と呼ばれているアレは、実に世の中を便利に変えた。
それまでコンピューターでは感じることができなかった感覚、つまり味覚とか
触覚とかを、確実に、正確に感じることができるようにしてしまったのだから。
授業を終えた僕は、太一君の家へ向かう。ベルを押すと、すぐ太一君が出
てきた。人はまばらにしかいない。いるのは僕達のような小学生か、ママや
パパが『前時代的仕事』と呼ぶ、肉体を使う仕事をしている大人だけだ。
「なぁ、コンピューター全面撤廃法案はどうなっている?」僕が聞くと、太一
君が答える。「安心しろよ。ボスが根回しを上手くやっているからな。なんせ
ボスは頭がいい」
「そうだよな、ボスは俺達小学生の優等生同士がつくったベイビィだもんな」
「パパやママ達は馬鹿だよ。コンピューターに洗脳されちまって。コンピュー
ターは便利だってすぐに信じ込んじゃったんだから」
「今じゃ、すべてコンピューターの言いなりで、部屋の外に出ることも出来な
い」
僕は、多くの筋肉を失い、ただの肉の塊と化したママたち大人を少しだけ哀
れに思った。
しい声で僕を起こしてくれる。僕は着替えて、食堂でひとりきりの朝食を食べる。
僕が部屋に戻ると、もうコンピュターの画面ではホームルームが始まっていた。
担任のH先生が少し怖い顔をしたが、直ちに一時限目の授業を始めた。今日
は金曜日なので、授業は午前中で終わりだ。授業が終わったら、太一君と会
おう。
ママは、今日から温泉旅行に友達と行くのだそうだ。朝からカタカタとキー
ボードでお喋りをしていて、うるさい。休憩時間に、僕はちょっとママのネット
を覗いてみる。
どうやらママは、箱根のジャングル風呂に行くことにし、アレを着る。
『体感服』と呼ばれているアレは、実に世の中を便利に変えた。
それまでコンピューターでは感じることができなかった感覚、つまり味覚とか
触覚とかを、確実に、正確に感じることができるようにしてしまったのだから。
授業を終えた僕は、太一君の家へ向かう。ベルを押すと、すぐ太一君が出
てきた。人はまばらにしかいない。いるのは僕達のような小学生か、ママや
パパが『前時代的仕事』と呼ぶ、肉体を使う仕事をしている大人だけだ。
「なぁ、コンピューター全面撤廃法案はどうなっている?」僕が聞くと、太一
君が答える。「安心しろよ。ボスが根回しを上手くやっているからな。なんせ
ボスは頭がいい」
「そうだよな、ボスは俺達小学生の優等生同士がつくったベイビィだもんな」
「パパやママ達は馬鹿だよ。コンピューターに洗脳されちまって。コンピュー
ターは便利だってすぐに信じ込んじゃったんだから」
「今じゃ、すべてコンピューターの言いなりで、部屋の外に出ることも出来な
い」
僕は、多くの筋肉を失い、ただの肉の塊と化したママたち大人を少しだけ哀
れに思った。
サクヒン、短い中で、ポイントとつかんで、うまく描いてある。と同時に、やっぱり800字では少しムリでした。なにしろ、撤廃法案にカレラは、賛成なのか反対なのか、その肝心のところが、定かでない(優等生は、学校をサボルことを考える→だからCPU賛成派のようだ。
ソレニシテハ、コンピューター漬ノ大人を嘲っている「反対派みたい」だし、ボクたちが作ったボス、というのも、いまいち正体不明です。ロボットなのか? 多分ネ。